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乳がん治療と「副作用」の基礎知識。患者本人と家族の向き合い方

乳がんに限らず、がんを治療する時に必ず出現するのが副作用です。医療系のドラマではかなり苦しそうに描かれることが多く、辛いというイメージが先行してしまう人も多いのではないでしょうか。

ただ、個人差はあるものの、副作用の出現傾向はある程度決まっているため、現在ではその対策や予防をとることができるようになってきています。今回は乳がん治療の副作用と、副作用に対する患者や家族の向き合い方について紹介します。乳がんとの長い付き合い方の基本的な知識なので、ぜひ理解しておきましょう。

乳がん治療の副作用

乳がんの治療法には、薬物療法・手術療法・放射線療法があります。この3種類を、もしくはいずれか複数を組み合わせて治療を行っていきます。それぞれメリットとデメリットがあり、「身体への負担や予後」や「後遺症の有無」が異なります。

治療に関する詳しい説明は、以下のページもあわせて参照ください。

※関連ページ:「手術療法」、「薬物療法」、「放射線療法」。乳がんの代表的な治療法

■副作用の種類や出現時期は治療法によって異なる

それぞれの治療法はアプローチの仕方が異なるため、出現する副作用は多岐にわたり、また出現時期にも違いがあります。副作用には、ある程度自分で対処できるものもあれば、早急な医師への相談が必要なものもあります。自覚症状に現れず検査で発見できるものもあります。

対応方針を立てるために、治療期間中の食事(摂取量・頻度・内容)や、吐き気(あるかないか・頻度)、排便(回数・硬さ)、内服薬(同じ時間に飲めているか)の記録をとっておくとよいでしょう。治療は、あらかじめ決められた通りに行うことで効果を発揮します。副作用の出現が怖いからといって、途中で治療を自己判断で中止しないようにすることが大切です。

一方で、副作用の強さと治療効果は関係がありません。治療の継続が難しくなるほど副作用が辛くなった場合や、副作用について不安があれば、医師や看護師に相談するようにしましょう。

薬物療法・手術療法・放射線治療の副作用の代表例

それぞれの治療法の副作用について簡単に代表例を紹介していきます。

■薬物療法

薬物療法では、使用する薬剤によって出現する副作用の種類が異なることや、副作用の強さに個人差があります。

化学療法は、一般的に「抗がん剤」と呼ばれるもので、細胞分裂を阻害することが主な作用です。そのため、吐き気を催す・毛が抜ける・便秘になるなど、全身の様々な場所に起こります。また、血小板や白血球が減少するため、出血しやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりします。

ホルモン療法は女性ホルモンを作らないように、または取り込まないようにする薬を使うことで、がん細胞の増殖を抑える治療です。更年期障害のような「ほてり」や「のぼせ」といった、気分の落ち込みやイライラがみられます。長期で治療をすることで、子宮がんや骨粗鬆症になるリスクが高まります。

分子標的治療は、乳がんの増殖に関与している分子に対してピンポイントに攻撃することができる治療です。初回の治療にて、4割の患者は発熱や寒気がでることがわかっています。稀に、呼吸器症状や心不全が出現することもあります。

■手術療法

手術療法は、乳房に発生したがん細胞を直接除去できる方法です。身体に直接メスを入れて傷をつけるため、傷口が塞がるまでに時間を要します。その間に激しい痛みを生じたり、傷口から感染するリスクがあります。手術後は手術部位を清潔に保つようにしましょう。

■放射線療法

薬物療法や手術療法に比べて身体的負担が比較的軽いことが、放射線療法の特徴です。
一方、高エネルギーの放射線を照射したときに、正常な細胞を傷つけてしまう部分があり、副作用の出現もあります。

すぐに現れる副作用として、照射した部分に日焼けのような赤み・黒ずみ・水ぶくれができたり、皮膚が乾燥しやすくなります。乳房部分切除後だと、乳房全体が少し腫れることがあります。稀に照射後数か月から数年間に副作用が現れる場合があります。乳房や皮膚が萎縮したり、毛細血管拡張症となったり、放射線療法が原因となるがんの発生がある場合があります。

乳がんの副作用への向き合い方

乳がんの治療を行っていく中で、副作用の出現で悩んだり不安になるのは当然でしょう。特に、毛が抜けたり爪がボロボロになるなど、見た目に直接影響が出るものもあり、治療過程を見ている家族も心苦しくなるかと思います。

不安なときに相談したり気持ちを吐き出せるようにしていくために、医師や看護師と信頼関係をつくっておくことも大切です。家族が乳がんと闘っていて不安を口にしているときには、否定したり流したりせず、受け止める態度で接しましょう。

また、患者会も積極的に活用しましょう。参加して気持ちを吐き出すことや、情報交換をすることで悩みが解決することもあります。乳がんとの長い付き合いの中で、副作用やそれに対する不安はつきものです。ひとりで抱え込まず、適切な対応やサポートを受けて、療養していきましょう。