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乳がんの「内視鏡手術」のメリット・デメリット。手術を希望する際の注意点

乳がん治療には、手術療法・放射線治療・化学療法の「三大療法」にホルモン療法を加えた4種類の方法が代表的です。さらにそれぞれの治療法は細分化され、がんの病期・ステージや患者の容体によって医師からの説明を受けた後、医師から提示される治療法を選択するケースもあります。

内視鏡手術は、従来の手術療法と比べると患者の負担が少ないため、注目度が高まっている手術の1つです。ただ、内視鏡手術にはデメリットもあるので、しっかりとメリット・デメリットを比較して選ぶ必要があるでしょう。その代表的なポイントを解説します。

乳がんの内視鏡手術とは

内視鏡手術は、乳がんの手術療法における「乳房部分切除術(温存手術)」の1種です。乳房部分切除術は、乳房全体を手術する「乳房切除術(全摘手術)」と比べると、身体への負担が少なく、乳房を再建しやすいです。そのなかでも、従来の開胸手術と比べると内視鏡手術は切除する箇所が非常に小さいため、乳房切除術のメリットを大きくできるのが特徴といえるでしょう。

内視鏡手術は「鏡視下手術」ともいいます。皮膚を数センチ程度切開し、そこにレンズやはさみなどを搭載した管を挿入して、医師がレンズを通して映る映像を見ながら手術を行います。一般的には脇の下や乳輪の縁、乳房の外側を切開し、そこから内視鏡を入れて、腫瘍を見つけたら色素を付着させた後、内視鏡下で切除手術します。

内視鏡手術は、多様ながん治療やヘルニアなどの他の病気の治療でも採用されるケースも多いですが、乳がんにおいては「主流な術式ではありません」。一方、積極的に内視鏡手術を導入している医療機関もあるので、メリット・デメリットをしっかりと把握した後に乳がんの内視鏡手術の成績が豊富な医療機関を探す必要があるでしょう。

※出典:国立がん研究センター「乳がんの手術について

乳がんの内視鏡手術のメリット

乳がんの内視鏡手術の最大のメリットは、手術の傷を非常に小さくできることが挙げられます。手術中の出血量も少ないうえ、傷が小さいことから手術後の回復も早くなる傾向もあります。さらに皮膚を切開する長さ、位置を柔軟に変えやすいことも乳房の「再建手術」においてはプラス要素といえるでしょう。

「乳房再建手術」とは、乳がんを切除することによって変形・喪失した乳房を可能な範囲で取り戻すための手術のことです。乳房再建の方法は複数種類ありますが、いずれにしても切除する乳房の部分が大きくなるほど、手術の規模や体への負担も増大する傾向があります。内視鏡手術は、皮膚の傷を最小限に抑えられるうえ、乳房内で大胸筋と乳腺を剥離するので外部から脂肪を移植しやすいため、よりきれいに乳房を再建しやすいのです。

また、乳がんの内視鏡手術は保険診療なので治療費用の負担が少ないのも、メリットの1つといえるでしょう。

乳がんの内視鏡手術のデメリット・注意点

内視鏡手術が乳がん治療で普及しきっていない理由としては、「データ不足」と「他の乳房温存手術とのメリットの比較」の2つが挙げられます。乳がんの内視鏡手術は比較的、新しい手術療法であり、他の手術と比べると件数や術後の経過に関するデータが少ないのが代表的な注意点といえるでしょう。加えて乳がんの内視鏡手術は未だに統一した手術のやり方が確立していないため、手術の精度や成績などは医療機関に依存するのも患者にとっては不安要素の1つといえるでしょう。基本的に内視鏡手術は高い技術が求められるうえ、リンパ節郭清の確実性や長期的な再発の危険性について、データが集まっていないのでなおさらです。

また、内視鏡手術以外の乳房部分切除術そのものが、全摘手術と比べると切開する範囲や切除部分が少ないことも乳がんの内視鏡手術が普及していない要因の1つと考えられます。元々、術後の痺れや腕を動かしにくくなるといった後遺症のリスクが少ない乳房部分切除術のなかで、敢えて内視鏡手術するメリットがあるのかといった視点も必要です。もちろん、内視鏡手術の方がよりきれいに乳房を再建しやすいといった利点もあるため、俯瞰的な比較検討が求められます。

内視鏡手術のメリット・デメリットを俯瞰的に比較しよう

乳がんの内視鏡手術のメリット・デメリットについて解説しました。内視鏡手術は比較的新しい手術方法であり、データ不足や施術できる医療機関が少ないといったデメリットはあるものの、乳房を再建しやすいといったメリットも存在します。いずれにしても内視鏡手術が可能なのは、乳がんの進行が進んでいない(皮膚まで到達していない)状況です。早期発見・早期治療を心がけたうえで、万が一の場合はメリット・デメリットを把握し、他の治療法と俯瞰的に比較したうえで手術方法を選択しましょう。