乳がんの「転移」の基礎知識。転移先の代表例と治療法とは
がんにおける「転移」の有無や状態は、その後の治療の方法や支援内容、生存率、再発率に大きな影響を及ぼします。基本的にがんの転移がなければ、手術によってほとんどのがんを治せると考えられているものの、早い段階で多くのがんが転移してしまうのが実情です。
もちろん、女性のがんの代表格である乳がん、子宮頸がんにおいても同様であり、だからこそ検診による「早期発見・早期治療」の重要性にも直結するのです。今回は、乳がん・子宮頸がんにおける転移の基礎知識について解説します。
がんの「転移」とは
がんの「転移」を端的に言い表すのであれば、「がんが生じた臓器以外の部位」にも発生してしまうことを指します。がん細胞が発生してしばらくすると、血管やリンパ管を介して別の部位に運ばれて、その部位で同じように増殖してしまうのです。
また、最初にがん(腫瘍)が発生した病変のことを「原発巣」であり、別の臓器などに転移したがんは「転移巣」と区別して呼ばれることも覚えておきましょう。
転移巣のがん細胞は原発巣の細胞からできているため、基本的に原発巣の治療法に則って進められます。例えば、乳房(原発巣)から肺(転移巣)にがんが転移した場合、肺の腫瘍は乳房のがん細胞でできているので、乳がんの治療法を参考に治療するのです。
※出典:がん情報サービス「原発巣」
がんの転移と再発
がんの転移と再発はしばしば混同されるのが「がんの再発」です。がん治療の後に再び発生したり、進行したりすることをがんの再発といいます。具体的には、手術で取り残したがんが再度増殖するケースのほか、放射線・薬物治療で小さくなったがんが再び大きくなることなどが挙げられます。血液、リンパ、前立腺がんにおいては同じ意味で「再燃」と呼称されることもあります。
がんの再発は3つに分類できます。具体的には原発巣もしくはその付近に再度、がんが発生する「局所再発」のほか、原発巣付近のリンパ節や隣接組織で再発見される「領域再発」、原発巣から離れた臓器や組織に発生する「遠隔再発(遠隔転移再発)」となります。
そのため、がんの転移については、遠隔転移再発のように「がんの再発の一種」と考えられることが一般的です。
がんの転移の種類
がんの転移は大きく4種類に分けられます。それぞれの特徴を確認してみましょう。
血行性転移
原発巣から血液を通して他の部位に転移することを「血行性転移」といいます。血管には、心臓から送り出される血液を運ぶための「動脈」と全身の臓器から戻ってくる「静脈」があり、血行性転移では主に静脈に乗ってがん細胞が運ばれてしまうことが一般的です。血行性転移は他の転移と比べると抗がん剤が効きやすい傾向があります。
播種性転移
播種性転移(はしゅせいてんい)は、腹腔や胸腔内といった内臓と腹膜・胸膜の間にある”隙間”の内側にまるで種を蒔くように、がんが広がっていく転移を指します。
リンパ行性転移
リンパ液を全身に運ぶためのリンパ管にがん細胞が入り、原発巣から離れたリンパ節まで広がって転移することを「リンパ行性転移」といいます。リンパ管は主に脂でできているため、水溶性の抗がん剤の効果が薄くやっかいながんの転移とされています。
浸潤(しんじゅん)
原発巣に隣接する臓器や部位にがん細胞が広がることを「浸潤」といいます。浸潤という言葉の認知度が一般的には広まっていないので、転移と同様に語られることが多いですが、実際は「離れたところにがん細胞が飛び火する」という転移とは区別されていることも覚えておきましょう。
乳がんと浸潤・転移
乳がんは、まず「浸潤がん」と「非浸潤がん」に区別されます。このうち、非浸潤がんは、がん細胞が乳管や小葉の中に留まっている状態であり、比較的治療しやすいケースが多いです。
一方、浸潤がんは乳管や小葉の外の組織まで広がっている状態であり、さらに血管・リンパ管を通じて全身の臓器に転移している可能性が高まります。乳がんの場合は、リンパ節、皮膚、骨、肝臓、肺、脳への転移が多く見られます。また、転移の有無は乳がんの病気(ステージ)の基準にもなっています。詳細は以下の表と記事を確認してみてください。
| 病期(ステージ) | しこりの大きさ | リンパ節への転移 | 5年生存率 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ期 | 2cm以下 | 転移なし | 99.9% |
| ⅡA期 | 2cm以上 | 脇下への転移あり | 95.9% |
| 2~5cm | 脇下への転移なし | ||
| ⅡB期 | 2~5cm | 脇下への転移あり | |
| ⅢA期 | 5cm以上 | 脇下への転移あり | 81.5% |
※関連記事:乳がんの病期(ステージ)について。早期発見が重要な理由
がんの早期発見・早期治療が大切
がん治療において、転移の有無や状況が大きな影響を及ぼすことについて解説しました。特に乳がんの場合、転移前に早期発見・早期治療できれば5年生存率や根治できる可能性は、他のがんと比べても非常に高いのが特徴です。定期的に検診を受けることで、早期発見・早期治療につなげましょう。