乳がんの病期(ステージ)について。早期発見が重要な理由
様々な検査によって発見された乳がんは、しこりの大きさ、リンパ節や離れた臓器への転移の有無などで、0~IVの5段階の「病期(ステージ)」に分類されます。乳がんの治療は病期によっておおまかな方針が定められているため、その内容もある程度、把握することができます。病期ごとの乳がん治療や生存率について紹介します。
私たちが、「乳がんは早期発見・早期治療が重要」と繰り返し発信している理由にもつながるので、ぜひチェックしてみてください。
乳がんの病期(ステージ):0期
一般的に乳がんは乳汁を乳頭に運ぶ「乳管」もしくは、乳汁をつくる「小葉」で発生します。その後、乳管を破って他の組織に広がります。このうち、まだ乳がんが乳管の内部に留まっている状態を「非浸潤がん」もしくは「0期」といいます。
ちなみに浸潤とは医学用語で「がんが周囲に広がっていくこと」という意味です。つまり非浸潤とは、乳がんがまだ周囲に広がっておらず影響が小さいことを示しているのです。
乳がんの0期の治療法は、乳房の部分切除といった手術療法が中心となります。また、再発防止のため、切除手術後に放射線治療やホルモン療法を行うこともあります。
乳がんの病期のなかではもっとも早期の段階であり、0期で発見することができれば体への負担などを最小限に押さえた治療が可能になります。
■手術例:乳房部分切除
腫瘍(がん)と周辺の正常な乳腺などを切除します。手術後も乳房を保てるため「乳房温存術」とも称されます。ただし、切除する範囲が大きくなるほど変形も拡大します。
※出典:国立がん研究センター「乳がん」
乳がんの病期(ステージ):Ⅰ~ⅢA期
乳管から周囲の組織に浸潤した乳がんは、Ⅰ期以降に分類されます。
冒頭で乳がんのステージには5段階あると説明しましたが、ステージⅡはA~B、Ⅲ期はA~Cにさらに細かく分類されます。このうち、ステージⅠ~ⅢA期については「手術で取り除ける乳がん」というカテゴリで、病院で治療しなくても良い「根治」の状態まで改善できる可能性が高まります。
まずは、ステージⅠ~ⅢA期の状態について確認してみましょう。
■病期Ⅰ~ⅢA期
病期(ステージ) | しこりの大きさ | リンパ節への転移 | 5年生存率 |
---|---|---|---|
Ⅰ期 | 2cm以下 | 転移なし | 99.9% |
ⅡA期 | 2cm以上 | 脇下への転移あり | 95.9% |
2~5cm | 脇下への転移なし | ||
ⅡB期 | 2~5cm | 脇下への転移あり | |
ⅢA期 | 5cm以上 | 脇下への転移あり | 81.5% |
乳がんのⅠ~ⅢA期では、手術前、がんの悪性度などを検査して再発の可能性が高い場合は、薬物療法や放射線治療を行うことが一般的です。ただし、乳がんの広がりの程度によっては、しこりを小さくするための術前薬物療法を行うケースもあります。
■手術例:乳房切除術
乳がんが広範囲に広がっている場合は、部分切除が行えないため全体を切除する「乳房切除術」を行います。また、乳頭および乳輪、皮膚を残してシリコンや背や腹の脂肪を使って、手術前の乳房の状態をできるだけ取り戻すことも可能です。
※出典:国立がん研究センター「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」
乳がんの病期(ステージ):ⅢB~ⅢC期
乳がんの進行がより進んだⅢB~ⅢC期では、手術よりも先に薬物療法と放射線治療によってしこりを小さくする必要があります。その際に用いる薬などは、治療前に行う生検の結果で決定します。
■病期ⅢB~ⅢC期
病期(ステージ) | しこりの大きさ | リンパ節への転移 | 5年生存率 |
---|---|---|---|
ⅢB期 | 大きさは問わない | 皮膚、胸壁への浸潤 | 81.5% |
ⅢC期 | 鎖骨の周囲 胸骨のリンパ節への転移 |
病期Ⅰ~ⅢA期との違いは「手術のみによる治療の有効性が確立していない」ということです。そのため薬物療法が中心となり、根治がより難しいことが挙げられます。とはいえ、生存率は決して低くないため、薬物療法、放射線治療、手術療法を組み合わせた治療を受けることで、症状を軽減することが可能です。
乳がんの病期(ステージ):Ⅳ期
がんが全身に広がっている状態です。Ⅳ期では、基本的に手術療法は行えません。そのため、薬によって全身のがんを攻撃して進行を遅らせるほか、症状を抑えます。
■Ⅳ期
病期(ステージ) | しこりの大きさ | リンパ節への転移 | 5年生存率 |
---|---|---|---|
Ⅳ期 | 大きさは問わない | 骨や内臓に転移 | 35.7% |
手術や放射線治療は、乳がんそのものの治療ではなく、骨転移や脳転移によって生まれる症状を和らげる目的で行うことがあります。
早期発見・早期治療には定期検診が不可欠
乳がんの0~Ⅳ期の特徴と治療法について解説しました。今回、紹介したのはあくまで大まかな内容であり、実際の治療などは個々の状態や検査結果によって異なります。ただ、同じ乳がんであってもⅠ期とⅣ期の生存率の違いは大きく、また進行するごとに手術後に乳房を維持できる期待値も低まってしまいます。このことから、やはり乳がんの早期発見・早期治療はとても重要であり、定期検診やセルフチェックは全ての女性が行うべきだといえるでしょう。