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乳がんの病理検査「細胞診」と「組織診」の検査方法とは

乳がんの検査方法には、視診・触診、超音波検査、MRI検査、マンモグラフィ検査など様々な種類があります。臓器や細胞などを採取して観察する「病理検査」も代表的な乳がんの検査方法の一つです。病理検査はがん検診で「要精密検査」という結果になった後に行う機会が多いので、検査内容などに不安を抱く方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は主な病理検査である「細胞診」と「組織診」について解説します。病理検査はほとんどのがんの診断で欠かせないので、ぜひ検査の流れなどを確認しておきましょう。

そもそも病理検査ってなに?

病理検査は、病変といった体の一部を採取して顕微鏡で観察し、最終的にがんの有無や悪性・良性、種類などを診断する「病理診断」のための検査です。数ある乳がんの検査方法のなかでも、病理医といった専門医が精密かつ時間をかけて検査を行うのが特徴であり、がんについて最終的な診断を下す「確定診断」においてとても重要な役割を担っているのです。病理検査としては「細胞診断」「組織診断(生体検査)」のほか「迅速診断」「病理解剖」などが挙げられます。それぞれの概要を確認してみましょう。

病理検査の種類①:細胞診断(細胞診)

超音波検査などで撮影した画像を参考にしながら、病気によって生体が変化した腫瘤などの「病変」の細胞を注射器で吸い取り、顕微鏡で調べる方法です。細胞診断はさらに分類され、前述した方法の正式名称は「穿刺吸引(せんしきゅういん)細胞診」といいます。その他の細胞診には、尿や痰、胆汁、髄液などの体から剥がれ落ちた細胞を収集して検査する「剥離(はくり)細胞診」や病変部の細胞をブラシやヘラなどで擦って採取する「擦過(さっか)細胞診」があります。疑われるがんの種類や病変の部位などによって、細胞の採取の仕方とその名称が変わると理解してください。乳がんにおいては、穿刺吸引細胞診が行われるケースが多いです。

病理検査の種類②:組織診断(組織診)

細胞診と並んで代表的な病理検査の一つが「組織診断(組織診)」であり「生検(せいけん)」とも称されることもあります。細胞診と組織診の大きな違いは、細胞よりも大きな幹部の組織を採取して顕微鏡で検査する点です。細胞診よりも太い針を使って、患部の一部を切り取るため体の負担は細胞診より大きいものの、診断の正確性は組織診の方が高いとされています。そのため、確定診断には組織診が用いられるのが一般的であり、細胞診は行わないケースもあります。両者の大まかな違いを以下でまとめたので参考にしてください。

■細胞診・組織診の違い

細胞診 組織診
採取する対象 患部の細胞 患部の組織
採取方法 針を刺して細胞を採取 患部の一部を切除して採取
侵襲性(体への負担) 低い 高い(細胞診との比較)
正確性 低い(組織診との比較) 高い
役割 推定診断 確定診断

図表の高低はあくまで細胞診・組織診を比較した結果であることに注意してください。細胞診・組織診ともに技術が進歩しており、正確性や侵襲性は日々改善しています。組織診の種類は、コア針生検、吸引式組織生検、外科的生検の3種類が代表的です。以下でそれぞれの特徴を解説します。

コア針生検(CNB)

コア針生検(CNB)とは、太さ2㎜程度の針とバネを装着した専用装置を使用して組織を切除する検査方法です。具体的には、局所麻酔を打ったうえで超音波装置を使いリアルタイムで患部の位置を確かめながら、針を適切な場所に近づけてボタンを押して組織を採取する流れとなります。一般的な病変部であれば、コア針生検で確定診断することができます。
検査時間は10〜20分程度。外来で検査可能であり、局所麻酔を使えるので痛みも抑えて検査できるのがメリットです。ただ、病変部の場所や検査結果によっては確定診断できないケースもあり、その場合は後述する「吸引式乳腺組織生検(VAB)」を受けなくてはなりません。

吸引式乳腺組織生検(VAB)

コア針生検よりも太い針(3~6㎜程度)を使用し、バネだけでなく吸引もして組織を切り取る検査方法です。コア針検査と同様、局所麻酔を使えるため痛みは少ないですが傷が大きくなるため、検査後1~2日は出血に対して注意しなければなりません。ただ、体への負担が少ない事務作業程度の仕事であれば、検査当日から行えます。体への負担は細胞診よりも大きく、後述する外科的生検よりも小さいと理解しておきましょう。検査結果はコア針生検と同じく約10日間です。

外科的生検

針生検で確定診断が下せない場合や、がんの疑いが強いときに採用される可能性が高まるのが外科的生検です。コア針生検・吸引式乳腺組織生検との大きな違いは、メスで切開して病変の一部、もしくは全部を摘出して病理診断する点です。体への負担は針と比べると大きく、乳房温存手術に悪い影響を及ぼす可能性が報告されています。

病理検査の正しい知識を身に着けよう

病理検査の役割と代表的な方法について解説しました。病理検査は、がんの確定診断において非常に重要な精密検査です。細胞診と組織診の両方が行われるケースや、組織診だけ、またはいきなり外科的生検が実施されるなど様々な検査方法が想定されるため、事前に正しい知識を身に着けていざというときに慌てないよう備えておくことをおすすめします。