乳がん治療には「療養手帳」を活用しよう! 療育手帳との違いと記入のポイント
乳がん治療には、治療の経過による体調の変化だけでなく、病気に対する捉え方が変わったり、周囲から投げかけられる言葉で傷つくこともあります。そのような状況で活用できるのが「療養手帳」です。今回は療養手帳とその活用のポイントについて説明していきます。
療養手帳とは
療養手帳とは、がんになった人ががん治療の経過や、さまざまな説明を受ける中での自分の考えや感情を書き出すための手帳です。国立がん研究センターがん対策情報センターが発行している「患者必携 がんになったら手にとるガイド」の別冊として付録しています。療養中に大切なのが、「信頼できる情報を集めること」と「自分なりの病気に対する態度を決めること」です。療養手帳を書いていくことで、自然と整理されていくように構成されています。
■療養手帳の入手方法
療養手帳を手に入れるためには以下の方法があります。
1)がん情報サービスホームページからPDFファイルで読む
2)電子書籍で読む
3)がん相談支援センターで見本版を読む
4)書店で購入する
5)出版元から購入する
※出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がんになったら手にとるガイド」
似たような単語に「療育手帳」があります。療育手帳とは、厚生労働省が知的障がい者に交付している「証明書」です。療育手帳を持つことで障害の証明となり、生活や就職に役立つサービスを安く受けることができます。よって、がんとは全く関係がありません。
※出典:厚生労働省「障害者手帳について」
療養手帳を記入するメリット
■がん治療の流れがわかる
がんと診断されてから療養が始まり、入院から通院での療養に切り替わるところまで、フローになって記載されています。いま自分がどの段階で何をするべきなのかが一目でわかるようになっています。
■各段階でやるべきことがリストになっていて状況が理解しやすい
例えばがんと診断されてから治療が始まるまでのチェックリストがあり、また同時にストレスのチェックリストがあります。それぞれの状況にあてはまる項目をチェックするだけで、これからさらに「どんな情報を収集するべきか」、「どうストレスに対処するか」、などアクションが明確になるようになっています。特に乳がんは、ホルモンが原因になっているため、分泌量の上下によって気持ちが不安定になりやすい状況です。ストレスが溜まっている状況を早期に察知して解消していくことが大切で、療養手帳に記載していくことで可視化できます。
■自由記載欄が多くメモや気持ちのアウトプットに使える
医師から受けた説明は、ショックが大きく時間が経つと忘れてしまったり、いつの間にか都合の良い解釈をしてしまっているときがあります。医師の説明を受けながら療養手帳の項目に従ってメモをしていくだけで、医師に疑問を聞き忘れることがなく正確に記録に残すことができます。また自身のその時の病気の理解度と、自分が感じた気持ちを記載し、次回の受診時に持参することで、医師や看護師から適切なフォローを受けることができます。
■社会資源の使い方がわかる
がんの診断を受けてから治療をするまでに使える保険や各種制度についての説明が記載されています。経済的な負担を軽減していくための情報がまとめられており、どの手続きを行ったのかメモが取れるようになっています。
療養手帳の記入方法と活用のポイント
療養手帳には、各段階に各質問項目があります。各質問項目に従ってそこを埋めていくように記載していくだけで、自然と考えが整理されていくようにできています。
■治療が続くかぎり記録を一元化すること
療養手帳は、入院前から入院中、退院後まで一貫して書けるように構成されています。各病院でも入院中に資料だったり記録表が配布されるかと思います。資料が点在していると、振り返ってみたときにその情報だけが手元にないということが起こり得るため、入院中も療養手帳に記載していくことを意識しましょう。
また乳がんは、化学療法や放射線療法など、さまざまな治療法を併用していくため、そのたびに受ける説明の量も多く、混乱してしまうことがあります。そのためにも、一元化して書いておくことで、各治療法で質問するべきことが明確になっていきます。痛みや気持ち悪さに耐えられず、記録ができない状態の時には、誰に代筆をお願いするのかもあらかじめ決めておくとよいでしょう。
■「がんになったら手にとるガイド」を併用すること
療養手帳の記入である程度自分の考えや気持ちが整理されたときに、新たにさまざまな質問や不安がでてくるかと思います。「がんになったら手にとるガイド」には、その状況に合わせて必要な情報を得られるようにできています。併用することで、療養手帳をさらに活用できます。
乳がん治療の経過を療養手帳に書き出しましょう
今回は、療養手帳とその活用方法について説明してきました。乳がんの治療の経過では、体調の変化とそれに伴う気持ちの変化があり、心身ともに不安定になりやすい状況です。だからこそ、書き出していくことで視覚化しながら、自分の気持ちを整理する手がかりとなります。書き出していくなかで出てくる疑問や心配は、家族や担当の医師にも相談しましょう