子宮体がんの基礎知識となりやすい人の特徴。注意すべき症状とは
すべての女性が発症する可能性がある子宮がんには、がんができる場所によって「子宮頸がん」と「子宮体がん(子宮内膜がん)」の2種類に大別できます。日本では子宮頸がんが大部分を占め注目度も高いですが、子宮体がんの罹患数も年々増えているため注意が必要です。そこで今回は、子宮体がんの基礎知識とセルフチェックにつながる要注意な症状について紹介します。
子宮体がんの基本情報
子宮体がんは、主に胎児が入る「子宮体部」にできるがんを指します。子宮頸がんは子宮の入口周辺にできるため、子宮体がんはさらに奥の場所で発症すると理解しましょう。子宮体がんの統計情報を紹介します。
■子宮体がんの診断数、死亡数、生存率
診断される数(2019年) | 17,880例 |
死亡数(2020年) | 2,644人 |
5年相対生存率(2009~2011年) | 81.3 % |
※一部抜粋:国立研究開発法人 国立がん研究センター「がん情報サービス」
人口十万人に対する罹患数は27.6人。死亡者は4.2人となっています。他の部位と比べると、2019年時点で女性のなかでは第8位。最も多い乳房(97,142人)と比較すると、かなり少なく見えるかもしれませんが、実は子宮頚がん(10,879人)よりも罹患数が多いことが明らかになっています。ただし、2020年時の死亡数は子宮頸がんの方が多いです。いずれにしても、子宮体がんは女性が罹患するがんのなかでも上位に位置しているため、特に注意すべきがんの一種といえるでしょう。
子宮体がんの死亡率は加齢によって大きく高まる
子宮体がんの死亡率は年齢によって大きく変わります。30代に入ると徐々に上がりはじめ、50歳を超えると一気に跳ね上がります。具体的な死亡率を以下で確認してみましょう。
■年齢別:子宮体がんの死亡率(2020年:人口10万対)
年齢 | 死亡率 |
---|---|
~29歳 | 0 |
30~34歳 | 0.1 |
35~39歳 | 0.4 |
40~44歳 | 0.8 |
45~49歳 | 1.8 |
50~54歳 | 3.4 |
55~59歳 | 5.7 |
60~64歳 | 7.3 |
65~69歳 | 8.1 |
70~74歳 | 8.3 |
75~79歳 | 8.5 |
80~84歳 | 9.9 |
85歳以上 | 11.6 |
※出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「がん情報サービス」
29歳までの死亡率は極めて低く、50歳になると45~49歳よりも倍近くなる理由としては「閉経」のタイミングと密接に関わっていることが挙げられます。日本人の平均閉経年齢は約50歳となっているので、子宮体がんの死亡率が著しく高まる時期と重なっています。
子宮体がんは、子宮腔の表面を覆う粘膜組織「子宮内膜」で発生するケースが多いです。子宮内膜は生理によって剥がれ落ちるので、閉経前は罹患率と死亡率ともに少ないと考えられています。なお、罹患率(発症率)も40代後半から増加を始め、50代・60代にピークを迎えますが、その後は減少傾向になります。そのため、閉経を迎える年齢になる女性は特に子宮体がんの注意が必要な人といえるでしょう。
※出典:公益財団法人 日本対がん協会「子宮がんの基礎知識」
子宮体がんは「不正出血」に注意
子宮体がんの最も多い自覚症状は「不正出血」です。出血の程度は褐色になるレベルからおりものに血が混ざるまでさまざまです。さらに排尿時や性交時の痛みなどが挙げられるほか、子宮体がんが進行するとお腹の張りを感じるケースもあります。
子宮体がんを発症しやすい年齢やタイミングは比較的分かりやすいので、年齢を重ねて更年期や閉経する時期に不正出血が認められた場合は、早めに検査を受けることをおすすめします。
子宮体がんの検査は「子宮内膜細胞診」が一般的で、子宮内部に細い棒状の器具を直接挿入して採取した細胞を確認します。
子宮がんは若年から高齢まで意識すべき病気
子宮がんの1種である子宮体がんについて解説しました。比較的、若年から注意が必要な子宮頸がんに対し、歳を重ねるにつれリスクが高まるのが子宮体がんです。有効なワクチンの有無などは異なりますがいずれも子宮に発症する病気なので、「子宮がん」は大人の女性であれば人生の長い期間、注意しておくべきでしょう。
幸い、子宮体がんが転移せずに子宮内にとどまっている状態で治療できれば、80%以上の人は治すことが可能です。さらに子宮体がんの検査は、他の検査よりも比較的容易に精度の高い細胞検査・組織検査もできるのも特徴の一つといえるでしょう。とはいえ、子宮体がんのリスクが高まるタイミングを意識していなければ、不正出血があった際も「生理不順」と勘違いしてしまう恐れもあります。
加齢とともに発症リスクが高まるのは、他のがんや病気も変わりません。早期発見・早期治療を心がけて自身の体調と向き合い、疑わしい症状や体調が心配な際は、早めに医療機関に受診することをおすすめします。