logo

生存率や再発率、発生率など。乳がんに関わる代表的な指標の意味と数値の実態

乳がんをめぐる指標には数多くの種類があります。診断の基準になるほか、検診結果の受け止め方や予防の重要性を理解するうえで、それぞれの指標が表す「意味」とその「実態」を知っておくことはとても重要だといえるでしょう。そこで今回は、罹患率や生存率、死亡率など基本的な指標と最新の数値についてまとめて紹介します。指標を知ることは、乳がんの正しい理解にもつながるのでぜひ確認してみてください。

生存率の意味と乳がんの実態

生存率とは、がんと診断されてからある一定期間が経過した集団のうち、調査時点で生存している人の割合を示す指標です。生存率は、がんの治療成績を示す代表的な指標であり、例えば、診断後、一定期間が経過した時点で生存率を計測し、その割合(%)が低かった場合、そのがんの治療が困難であり死亡リスクが高いと推測できます。生存率は計測方法によっていくつか種類があり、対象とする集団によって数値が大きく変化する可能性があるので注意しましょう。

実測生存率と相対生存率

生存率の代表的な示し方は「実測生存率」と「相対生存率」に大別できます。実測生存率は死因を区別せず、すべての死亡を計算に含めた生存率です。一方、がん以外の死因を排除した生存率が「相対生存率」となります。相対生存率はいわゆる補正がかかった数値であり、がん患者について計測した実測生存率から対象となる人と同じ性・年齢分布の日本人の「期待生存率」を割って算出します。相対生存率は補正がかけられるのが特徴であり、世界と日本のがんの生存率を比較する際や、全国がん登録などでは相互生存率が用いられることを覚えておきましょう。

5年相対生存率

がんと診断されてから5年後に生存している人について、対象となる人の性別、年齢などが同じ日本人全体の5年後に生存している人の割合と比べてどれだけ低いかを表す指標です。がんの生存に関する目安の代表的な指標であり、100%に近づくほど生存率が高く、低くなるほど死亡リスクが高くなります。基本的にがんの発見が遅れて、リンパ節や周囲の臓器、遠い臓器まで広がると5年相対生存率は著しく低下する傾向があります。乳がんにおいては早期発見できれば5年相対生存率が他のがんよりも高いことから、検診による「早期発見・早期治療」が重要視される大きな要因の1つです。

サバイバー生存率

サバイバー生存率とは「診断から一定年数に生存している人(サバイバー)のその後の生存率」を示す数値です。正確には「条件付き生存率」といい、診断から1年経過した場合は比較する対象も同じがんの罹患者で1年以上生存した人に限定して計算し直すのが5年相対生存率との大きな違いです。自身の経過年数に応じて生存率を確認できるのが大きな特徴といえるでしょう。5年相対生存率は治療の是非や治療法の選択などに役立つ一方、サバイバー生存率は今後の生活や将来設計、長期的ながんとの付き合い方などを考える際に有用な指標だと考えられています。乳がんのがんサバイバー生存率は以下の通りです。

■乳がんのサバイバー5年相対生存率

0年サバイバー 1年サバイバー 2年サバイバー 3年サバイバー 4年サバイバー 5年サバイバー
87.6% 87.1% 87.9% 88.6% 89.7% 90.5%

※出典:がん情報サービス「乳房
※出典:がん情報サービス 用語集「サバイバー生存率

乳がんの生存率をめぐる実態

がん情報センターによると、乳がんの5年生存率は2009~2011年で92.3%となっています。また、10年生存率は79.3%で共にすべてのがんのなかで第3位と比較的高い数値であることが明らかになっています。

死亡率・罹患率の意味と乳がんの実態

死亡率とはある集団のなかで一定期間に死亡した人の割合です。乳がんの死亡率は25.4%で、女性のがんのなかでは5番目に位置しています。また、罹患率は一定期間には称した人の割合であり、乳がんの罹患率は日本人の全女性の9人に1人(約11%)で女性ではトップであることが明らかになっています。また、罹患率は乳がんにおいて特に年齢別の発症リスクを表す「年齢階級別罹患率」として示されることが多いです。乳がんの年齢階級別罹患率は29歳から急増し、49歳にかけて最初のピークを迎えて一度緩やかに減少した後、54歳から再び上昇して70~74歳に最も高くなることが明らかになっています。
※出典:がん情報サービス「乳房

指標を理解して正しい乳がん予防を

乳がんをめぐる代表的な指標を紹介しました。指標は乳がんの早期発見・早期治療の根拠になるので、正しく理解することで積極的な予防の習慣化などにつなげられるでしょう。ちなみに全国の乳がん検診受診率(40~69歳)は、2022年時点で47.4%となっています。ピンクリボンうつのみやは乳がんに関する情報の発信や早期発見を啓発することで、乳がん検診の受診率向上の実現を図っています。女性の明るい未来のために、「NPO法人ピンクリボンうつのみや」の活動にぜひご協力ください。