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男性が乳がんになる確率とかゆみや痛みなどの症状や治療法。受診すべきなのは何科?

乳がんといえば、一般的に女性の病気というイメージが強いのではないでしょうか。事実、乳がんの罹患率は男性は1000人に1人というデータもあり、8人に1人の女性と比べると希少であるといえるでしょう。一方、男性であっても乳がんは決して無縁というわけではなく、乳がんに対する男女の相互理解を深めるためにも「男性乳がん」について理解を深めることも必要だと考えられます。

そこで今回は、男性乳がんの基礎的な情報を女性の乳がんと比べつつ紹介します。発症年齢など女性の乳がんと大きく異なるポイントもあるので、ぜひ確認してみましょう。

男性乳がんの基礎情報

男性乳がんは、人口10万人あたり6例未満のまれながんの総称「希少がん」に該当します。まずは基礎情報を網羅的にまとめました。女性の乳がんと比較しながら確認してみましょう。

国立がん研究センターによると、米国の調査では男性のがんの発症率は1000人に1人となっています。日本においても大まかな傾向は変わりません。国立がん研究センターが運営するがん情報サービスによると、最新の男性乳がんの診断数は670例で死亡数は129人、人口10万人あたりの罹患率は1.1%となっています。それぞれを女性の乳がんと比べてみましょう。

■男性乳がんと女性乳がんの統計情報比較

男性 女性 総数
診断数(2019年) 670例 97,142例 97,812例
死亡数(2020年) 129人 14,650人 14,779人
人口あたりの罹患率 1.1% 150.0% ※人口10万対
人口あたりの死亡率 0.2% 23.1%

※出典:国立がん研究センター「がん統計情報サービス 乳房

また、年齢階級別罹患率については、女性は45〜49歳のときに一度目のピークを迎え、70〜75歳の二度目のピークを境に下落します。一方、男性乳がんはあらゆる年齢で発生する可能性があるものの、全体的にはほぼ横這いとなります。ただし、60代から徐々に右肩上がりになり、基本的にそのまま加齢とともに罹患率も高まり続ける傾向があります。

男性乳がんの自覚症状

男性の乳がんの自覚症状は少ないのが一般的です。それに加えて、男性乳がんの認知の低さによるセルフチェックをしている人の少なさなどが相まり、女性の乳がんと比べると発見時に進行してしまっているケースが多いとされています。具体的な症状としては、乳頭付近に固まりができる「腫瘤」が出現するほか、乳頭からの「血や体液の分泌」、乳頭やその周辺が変形する「乳頭変形」などが代表的です。これらの症状は女性の乳がんと大きく変わりません。

男性乳がんのリスクと治療法

極めて稀な男性乳がんですが、発症しやすい要素である「危険因子(リスクファクター)」がいくつか明らかになっています。その1つが遺伝であり、国立がん研究センターによると男女を問わず乳がんになったことのある近親者が1人以上いる男性は、そうでない男性と比べると乳がんを発症するリスクが2倍になるとされています。そのほかにも、胸部・乳房の放射線療法を受けたり、肝硬変などによって体内の女性ホルモンが通常値以上の場合も危険因子になるとされています。危険因子に当てはまる人は、特に男性乳がんを意識する必要があるでしょう。

男性乳がんの検査

男性乳がんの検査方法は女性の乳がんと基本的に同じですが、しこりなどが気になって外科・皮膚科を受診した後、乳腺外科を紹介されて診断を受けるケースが多いです。基本的にマンモグラフィ検査を最初に実施した後、超音波検査を行いますが、25歳未満の場合は超音波検査を先に行うケースもあります。それらの検査で異常が検知されると、組織を針で採取して調べる生検検査を行って診断を確定します。そのほかにも、CT検査などの画像検査によってより詳しく状況を確かめることもあるでしょう。

男性乳がんの治療法

男性乳がんの治療法も基本的には乳がんと同じと考えて問題ありません。乳がんのステージに応じて手術療法・薬物療法・放射線療法などから選択して治療します。基本的にはがんを切除することが可能であれば、手術を実施して適宜、術後に薬物療法も行います。薬物療法も女性乳がん準じており、同じ進行度であれば治療成績に大きな差異は見受けられません。参考までに女性乳がんのステージと生存率なども確認してみましょう。

■病期Ⅰ~ⅢA期

病期(ステージ) しこりの大きさ リンパ節への転移 5年生存率
Ⅰ期 2cm以下 転移なし 99.9%
ⅡA期 2cm以上 脇下への転移あり 95.9%
2~5cm 脇下への転移なし
ⅡB期 2~5cm 脇下への転移あり
ⅢA期 5cm以上 脇下への転移あり 81.5%

※出典:国立がん研究センター「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計

男性乳がんも女性乳がんも「早期発見・早期治療」が大切

男性乳がんの情報について解説しました。希少ながんの種類ではあり、数が少ないからこそ診療・受療上の課題が大きいとされるものの、女性の乳がんと同じく「早期発見・早期治療」ができれば生存率をより伸ばすことにつなげられます。男性の方も女性の乳がんに理解を深める1つのきっかけとして、男性乳がんのセルフチェックなどについて意識してみてはいかがでしょうか。