肥満は乳がん発症リスクを高める。食生活でがん予防を意識すべきポイント【サプリ・大豆・アルコール】
乳がんを始めとする様々な「がん」が発生するリスクを高めるとして、厚生労働省が挙げているのが「9つの危険因子」です。乳がんの危険因子には、年齢、未婚、高齢初産者などが列挙されており、そのなかでも多くの人にとって身近なのが「肥満の人(閉経後)」ではないでしょうか。
今回は、乳がんと肥満の関連性とがんのリスクを低減されるために意識すべき食生活のポイントについて解説します。
日本人女性は「肥満=乳がん発症リスク増大」の傾向が強い
厚生労働省の「がん検診推進事業について」の「乳がん検診」で記載されている通り、乳がんの発生リスクと閉経後の肥満については、関連性がある危険因子だと世界的に認められています。その他の危険因子については以下の記事をぜひチェックしてみてください。
※関連記事:乳がんに「なりやすい人」はいるの?遺伝・女性ホルモン・生活習慣などの9つの危険因子とは
上記の記事や厚生労働省の資料を確認すると「閉経前であれば肥満と乳がんの関係性はないのか?」と疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。確かに、わざわざカッコをつけて記載しているのであれば、そのように読み解いてしまうのも当然です。ただ、結論から言うと厚生労働省は「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」で、日本人にとっては閉経前でも肥満は乳がんのリスクを高める可能性があると明示しています。
※出典:厚生労働省「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」
世界・日本の乳がんと肥満に関する研究
閉経前・閉経後の肥満で乳がんの発症リスクが異なる理由として、世界的には「閉経前の肥満は乳がんのリスクを下げることが確実視されている」ということが挙げられます。一方、日本人を対象にした研究では、世界のデータと異なり「閉経前であっても乳がん発症リスクを高める可能性がある」ことが示されている研究もあります。例えば、2014年に国立がん研究センターが発表した研究では、閉経前乳がんではBMI30以上で基準の2.25倍のリスクを示した結果が明らかになっています。
※出典:国立がん研究センター「閉経前・後ともに肥満は乳がんのリスクに」
また、前者のデータについては食生活とがん予防における大きな指針を築いた、世界がん研究基金(WCRF)・米国がん研究機構(AICR)による「食物、栄養、身体活動とがん予防:世界的展望」で、閉経前後で別々に検討した結果によるものです。さらに2022年、東京大学大学院医学系研究科の小西孝明氏や瀬戸泰之教授によって、約80万例を用いた医療ビッグデータを解析した結果、「45歳未満の女性の肥満は乳がんの低リスク」と欧米同様の関連性を示したケースもあります。
※出典:東京大学医学部付属病院「45歳未満の女性の肥満は乳がんの低リスク」
いずれにしても太りすぎはリスクが大きい!健康的な体を維持しよう
肥満と乳がんの関連性については様々なデータがあるものの、閉経後の肥満はリスクが増大するのは確実で、日本人は閉経前も危険性が高まることは否定できない状況といえるでしょう。いずれにしても、乳がんのリスクが低い(かもしれない)から肥満でも問題ないと考えるのではなく、他の病気を予防するためにも「年齢関係なく健康な体を維持する」ことを心がける必要があるでしょう。
また、肥満の基準としてはBMIが指標として用いられることが多く、各研究においても採用されるケースが多いです。以下の計算式で「30以上(肥満)」を改善し、「25以上~30未満」から「25未満(正常)」を目指してみましょう。
■BMI(Body Mass Index)の計算式
体重(kg)÷【身長(m)×身長(m)】 |
また、近年は若年女性の過剰なダイエット「痩せすぎ」も問題視されることが増えています。一般的に「18.5未満」が痩せすぎとされ、がん研究開発法人によると「20歳時体重が低いほど、乳がんになりやすい」という研究結果も存在します。このような様々なデータを見比べると、改めて「太りすぎず、痩せすぎない」という体形が乳がんをはじめとする多くの病気の予防につながるといえるでしょう。
飲酒・大豆・サプリ・乳製品・喫煙・運動・ストレス。乳がんリスクとの関連性は?
食生活、健康づくりにおいて乳がんのリスクを考える際、食べ物や嗜好品などの個別の要素との関連性を意識する人は少なくないでしょう。そこで厚生労働省が示している各種の関連性をまとめました。
■乳がんリスクの関連性
乳がん発症との関連性 | 詳細 | |
アルコール | ほぼ確実に高まる | WCRF/AICR報告書では閉経前後を問わず、アルコール摂取量が多くなるほどリスクが高くなる。 |
大豆・イソフラボン | 低くなる可能性がある | 大豆を多く摂取することで乳がんリスクが低減する研究データが示されている。ただし、イソフラボンをサプリメントから摂取する効果は立証されていないため、服用は「1日30mg以下」推奨。 |
健康食品・サプリメント | 低くならない(乳がん予防目的での摂取は推奨されない) | WCRF/AICR報告書では「がんの予防目的にサプリメントを摂取することは勧められない」と記載されている。基本的に食事で栄養素を摂取すべき。 |
乳製品 | 低くなる可能性があるが牛乳の関連性は不明 | 乳製品全般を多く摂取している人は乳がんのリスクがわずかに低くなる結果がある。閉経前や低脂肪乳を摂取している人はその傾向が大きい。ただし、各乳製品やその正しい摂取量は不明。 |
喫煙 | ほぼ確実に高まる | 受動喫煙を含めて乳がん発症リスクを高めることがほぼ確実。加熱式電子タバコとの関連性は不明だが、禁煙した方がリスクが低くなる可能性が高い。 |
ストレス | 不明 | ストレスと乳がんの関連性の研究・報告は多くあるが、結果が一致していない。 |
運動 | 閉経前は不明。閉経後はほぼ確実に低くなる | 定期的な運動を行っている閉経後の女性は、運動量の少ない女性と比べて乳がん発症リスクが低くなるのはほぼ確実。 |
無理なく、日々の食生活から改善しよう
乳がん発症リスクと肥満について各種データなどを用いて解説しました。体質や生活環境などは様々ですが、正しく無理のない方法で健康的な体を維持することが大切です。また、食生活を改善することは、乳がんだけでなく生活習慣病などの多くの病気の予防につながる「お得な将来への投資」と意識すれば継続しやすくなるのではないでしょうか。