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乳がんと診断を受けてから治療開始までにやるべきこととは?

乳がんと診断を受けたとき、早く治療を始めたいと焦ったり、何をすべきか分からない人は多いのではないでしょうか。しかし、乳がんは必要以上に慌てるよりもまずは適切な情報集めが大切です。自分の乳がんの特徴を理解し、それに応じた治療法を見つけましょう。

今回は乳がんの診断後から治療開始までにやるべきことと、治療法を選ぶポイントや仕事・プライベートでの準備などを解説します。

乳がん診断から治療までの一般的な流れ

乳がん治療には手術、薬物療法、放射線療法があり、これらを単独あるいは組み合わせて行うので、治療の選択肢は多いです。そのため、乳がんの診断を受けてから患者自身が行う作業は、自分の乳がんの進行度・性質を詳細に理解し、自分にとって最適な治療法を選ぶことです。治療開始までの一般的な流れは以下の通りです。

1.乳がんの進行度・性質を知る

自分のがんの進行度を明確に理解できるまで、医師に説明を求めましょう。しこりのサイズ、リンパ節への転移状況、他臓器への転移の有無、病巣の数・位置などの確認が必要です。また、がん細胞の遺伝子を知ることで自分に薬物療法が向いているか、あるいはどの薬を使えば良いか分かるので、併せて確認しておきましょう。

2.病院(医師)を決める

病院選びの主な基準は、乳腺専門医が在籍していることと症例数の多さです。それに加えて、通院時間や交通手段などを考慮すると良いでしょう。症例数や治療内容に関する情報を調べるには、「国立がん研究センターがん情報サービス」が便利です。また、大きな病院だと乳腺科がなくても乳腺の専門医が在籍していることがあるので、気になる病院があれば問い合わせてみましょう。

3.治療方法を決める

担当医と相談するなかで乳がんの治療方法を定めていきます。ただし、乳がんは治療の選択肢が多い病気なので、担当医の治療方針に従うだけでは後悔してしまうかもしれません。例えば、外科手術なら乳房の切除範囲によって術後の審美性は大きく左右されます。できる限り情報を集め、治療内容が本当に自分の希望に合ったものなのか判断できるようにしましょう。日本乳癌学会のホームページでは、治療に関する小冊子を無料公開しているので、これらを参考にしてください。

4.セカンドオピニオンを検討する

担当医の話を聞いたうえで、さらに他の選択肢を知りたい場合は、セカンドオピニオンを聞きに行くと良いでしょう。担当医に話を通し、希望する医療機関のセカンドオピニオン外来を受診してください。受診前には自分が何を目的にセカンドオピニオンを受けるのか明らかにしておき、質問事項をまとめておきましょう。

セカンドオピニオンを受けようか迷ったり、不安を感じたりすることも珍しくありません。なかには「主治医からの印象が悪くなるのでは?」と不安を抱く人もいますが、それは誤解なので安心してください。がん治療を受ける際、「第2の意見」を聞きたいと思うのは当然のことなので、気負いせずに主治医に相談しましょう。主治医から紹介状などをもらうことで、よりスムーズにセカンドオピニオンを受けられます。

■セカンドオピニオンの6ステップ
1.主治医に質問や不安な項目を質問する(ファーストオピニオン)
2.身近な人や「がん相談支援センター」に相談する
3.セカンドオピニオンを受ける病院を決める
4.主治医に相談し、紹介状などを書いてもらう
5.セカンドオピニオン当日は信頼できる人に同行してもらう
6.主治医に情報を共有し、今後の治療ついて話し合う

※出典:一般社団法人 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版

患者が治療以外の私生活で準備すべきこと

乳がんの治療が始まるまでに、家族、仕事、お金の問題について整理しておくことをおすすめします。安心して治療に専念できますし、助成制度を活用することで医療費の負担を減らすことができます。それ以外はいつも通りの生活で問題ありませんが、以下の項目は優先的に準備しましょう。

家族と情報共有する

「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」では、夫やパートナーに乳がんの悩みや病状について正直に打ち明けることをすすめています。気持ちを伝えるのは迷惑にならないかと悩む人も多いですが、患者の治療経過や胸の内が分からないことの方が家族の負担になってしまいます。

子供に対しては、子供が理解できる範囲で嘘をつかずに伝えることが大切だといわれています。ただし、両親から聞く情報に齟齬があると子供は不安を感じるので、まずは夫婦の情報共有をした上で、正確に伝えられるようにしましょう。

もしも家族への伝え方が難しいと感じたら、「がん相談支援センター」が相談に乗ってくれます。

■がん相談支援センター
全国のがん診療連携拠点病院などに設置された、がんについての無料相談窓口。患者やその家族を含めて誰でも利用可能で、がん治療や療養生活の悩みなどを相談できる。

※出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「「がん相談支援センター」とは

仕事や助成制度について

仕事の調整については、がん相談センターに行けば医療ソーシャルワーカーや社会保険労務士などの専門家が対応してくれます。乳がんの診断後、突発的に仕事を辞めてしまう人もいますが、勤務先の休暇制度などを利用すれば仕事を続けられる可能性があります。経済的な負担を考えても、誰にも相談せずに焦って退職することだけは避けてください。

また社内では、就業規則や支援制度に詳しい人事や総務担当に相談するのが良いでしょう。有給休暇や病気休暇の使い方のコツなども教えてくれるかもしれません。その他、高額療養費制度や生命保険・医療保険・がん保険など、社内外で使える助成制度は治療前に確認しておきましょう。

※出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「診断から復職まで

乳がん治療には正しい情報収集と入念な準備が大切

乳がん治療の基本は早期発見・早期治療ですが、焦らずに自分に合った治療をすることが何より大切です。がんを治すことはもちろん、選んだ治療方法に後悔しないよう情報収集してください。その際は不安や焦りから根拠に乏しい情報に振り回されないよう注意が必要です。自分だけで情報の是非を判断できない場合は、担当医に確認を取るのも良いでしょう。

あとは精神的・経済的に困らないよう、家族との情報共有や会社への相談も欠かせません。がん相談センターなどのサポートを受けつつ、治療開始まで入念な準備をしていきましょう。