logo

乳がんの「免疫療法」ってなに? 保険や費用、効果などの注意点

乳がんを治療するためには様々な治療法があります。化学療法、ホルモン療法、分子標的療法が一般的です。そしてさらに研究が進んできているのが、免疫療法です。今回は免疫療法について、適用できる保険や費用などについて説明していきます。

免疫と免疫療法について

人間の体には、入ってきた細菌やウイルスなどの「異物」を取り除く「免疫」があります。いつも同じ状態ではなく、何かの影響により弱まったり、異物を取り除くために強まったりしています。免疫細胞には様々なものがありますが、血液の中に存在する白血球のうち「T細胞(Tリンパ球)」には、がん細胞を攻撃する作用があります。

免疫療法の役割

正常な人間の体の中でも、がん細胞は作られているといわれています。それにもかかわらずがん腫瘍として増殖していかずに排除されているのは、この「T細胞」のおかげです。

しかし、何かしらの原因によりT細胞が弱くなったり、がん細胞によってT細胞の活動を抑えられている(ブレーキがかかる)と、がん細胞の排除のスピードよりも発生スピードのほうが上回ってしまいます。

免疫療法とは、免疫に働きかけることで、免疫の力を使ってがん細胞を攻撃する治療法です。T細胞が攻撃する力を強めたり、T細胞ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)ことで、がん細胞を攻撃します。

効果が証明されているものと研究途中のものがある

免疫療法は研究開発が進められている治療法です。現時点で効果が証明されているものと、そうでないものがあります。どちらを使用するかによって、使える保険や設備が異なります。

効果が証明されているもの

効果が証明されている治療法には大きくわけて「①免疫チェックポイント阻害薬」と「②その他の免疫療法」があります。特に免疫チェックポイント阻害薬は薬物による治療なので、薬物療法の分子標的薬として分類されています。

免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)効果のある薬です。2020年時点で標準治療として治療ガイドラインにも記載があり、日本では保険治療で受けることができます。効果が証明されている薬は、オプジーボやキイトルーダなど数種類に限られます。またこの薬が使えるがんも限られています。がんの進行状態によっても使えるものが異なるため、まずは主治医に聞いてみましょう。

その他の免疫療法は、T細胞が攻撃する力を強める効果があるものです。主に「エフェクターT細胞療法」で、国内で保険診療を受けられるものはCAR-T療法のみです。この治療法は、一部の血液がんで使われることがあります。

効果が証明されていないもの

効果が証明されていないものは、まだ研究途中で効果や安全性が確認されていないもので、実施するには主治医と相談のもと、自己責任となります。大きくわけて「自由診療で行われるもの」と「研究段階の医療で行われるもの」があります。

自由診療で行われる免疫療法は、日本では効果や安全性が証明されていないため、医療として確立しているものではありません。一部のクリニックや病院で取り扱っていますが、治療費は患者が全額自己負担となります。

研究段階の医療で行われている免疫療法は、臨床試験や治験という形で実施されています。同意のもと受ける際には、研究内容を審査するための体制があるか、緊急の対応をできる体制が整っているかを確認しましょう。

免疫療法の副作用

免疫療法は、従来の治療法で起こるような副作用は少ないと言われています。しかし、効果が証明されている免疫療法でも、全身にさまざまな副作用が起こる可能性があります。治療後に起こるものに限らず、治療が終了してから数週間から数か月後に起こるものなど様々です。

症例数が少ない薬剤も多く、副作用の出現には予測できない部分が多くあります。そのため、治療を受けてからの期間に関わらず、副作用が起こったらそれを抑えることが必要です。副作用の対応には、ステロイド剤や免疫抑制剤が使われることもあるため、その対応ができる体制が整っていることが必要となります。

免疫療法を受ける前には、担当医に副作用やその対策について必ず聞いておきましょう。また、症状の出現には気を配り、何かあったらすぐに主治医や看護師に相談するようにしましょう。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用

以下に挙げる症状が出た場合には、すぐに主治医に連絡するようにしましょう。

・全身:高熱、意識の低下、けいれん、黄疸、出血やあざ、尿の色が濃くなる
・頭:視力低下、視野が欠ける
・胸:息切れ、呼吸困難、動悸
・消化器:血便、下痢、排便回数が増えた
・手足:歩行時につまづく、手足のしびれ・まひ、筋力低下・力がはいらない

※出典:国立がん研究センター「がん情報センター 免疫療法
※出典:国立がん研究センター「がん情報センター 免疫療法 もっと詳しく

まずは主治医に相談してみましょう

今回は免疫療法についてお話しましたが、まだまだ研究途中の分野なので、どんな症状が起こるか予測がつかないことが多くあります。そのため、この治療法が自分にあっているか、まずは主治医に相談するようにしましょう。効果が証明されている免疫療法で保険適用で治療をしても、副作用の出現によってはさらに治療費がかさむ場合があります。どのくらいの治療費になるのか、また併用できる保険の有無などを調べながら、より良い治療法をみつけていきましょう。