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乳がんの原因ってなに? 遺伝性乳がんと家族性乳がんの違いとは【特徴・治療】

乳がんの原因

国立がん研究センターによると、日本人が一生のうちで「がん」と診断される確率は男女ともに50%以上とされており、特に乳がんは女性の罹患率の第1位です。

しかしながら、がんの研究は日進月歩で進んできており、現代は「がんは早期治療によって治る時代」とも言われています。またがんは遺伝をするとも言われており、罹患歴のある家族は特に、早期発見のための健診と予防行動を取ることは大切だといえるでしょう。

今回は乳がんとなる原因と、遺伝性乳がんについて解説していきます。

※出典:国立がん研究センター がん情報サービス「乳房

乳がんの原因とは

乳がんがどのようにできるのか、実は未だに解明されていません。要因が複雑に絡み合ってがんの発症に至るため、何が直接の原因になっているのかがわからないのが現状です。ただし、発症リスクを高める要因は明らかになってきています。

主な要因には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌過剰、年齢、体質(遺伝子の異常・先天性の異常など)、生活習慣(肥満・喫煙)などがあります。特に最近の乳がん患者の増加には、生活習慣が関わっているといわれています。

遺伝性乳がんとは

乳がん患者の血縁者に、複数の乳がん患者さんがいらっしゃる場合があり、それを家族性乳がんと呼びます。そのうち、乳がんの発症に強く関わる遺伝子が原因で乳がんを発症している場合を「遺伝性乳がん」と呼びます。

原因となる遺伝子

乳がんを発症した人の5〜10%は遺伝子によるものといわれ、その原因となる遺伝子はいくつかあります。遺伝が原因で発症した乳がんのなかでも、その58%は遺伝性乳がん卵巣がん症候群であるといわれています。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群では、「BRCA1」または「BRCA2」という遺伝子に変異があることが分かっています。
「BRCA1」と「BRCA2」は白血球にあり、DNAの修復を行うがん抑制遺伝子とも言われています。がん抑制遺伝子に変異が起きることで、がんの増殖に歯止めが効かなくなると考えられているのです。

これらの変異した遺伝子は、親から子に2分の1の確率で遺伝します。つまり、親がこの遺伝子をもっていたとしても、必ずしも子どもに遺伝するとは限りません。またもしこの遺伝子変異を持っていたとしても、必ずしも乳がん・遺伝性乳がん卵巣がん症候群を発症するとは限りません。また、発症リスクは30歳から、年齢につれ高くなっていきます。

発症する人の特徴

以下のいずれかにあてはまる方は、遺伝性乳がんである可能性があります。気になる方は一度専門家に相談してみるとよいでしょう。

〇若年(40歳未満)で発症している
〇両側の乳がんを発症している、あるいは乳がんと卵巣がん(または卵管がん・腹膜がん)を同時に発症している
〇父方あるいは母方家系の血縁者に2人以上、乳がんを発症している人がいる、あるいは乳がんと卵巣がん(または卵管がん・腹膜がん)を同時発症している人がいる
〇男性乳がんを発症している
〇卵巣がん・卵管がん・腹膜がんのいずれかを発症している

※出典:四国がんセンター「遺伝性乳がん卵巣がん

遺伝性乳がんの検査

遺伝子変異があるかどうかをBRCA遺伝学的検査で調べることができます。過去に乳がんと診断された方や新たに乳がんと診断された方が対象です。

上記の項目が1つでもあてはまり、一定の条件を満たしていれば、特定の医療機関においてBRCA遺伝学的検査とカウンセリングを保険診療で受けることができます。上記に該当しない方でも誰でも受けることができますが、自費での診療になります。

検査の流れ

BRCA遺伝子検査ができる医療機関は限られています。まずはそちらを外来受診しましょう。検査は採血で実施します。血液中の白血球の遺伝子を調べます。遺伝子の分析には専門の検査会社に依頼し、結果が出るまで1か月程かかります。

医療機関によっては、検査結果が届くタイミングで遺伝子カウンセリングを実施し、検査結果の説明や陽性だった場合の対応方法、検査結果に対する心理的フォローを行います。

検査費用

検査費用は医療機関により多少異なりますが、おおよそ自費で20万円くらいです。保険診療だと3割負担の方で6万ほど、1割負担の方で2万円ほどかかります。
外来受診やカウンセリング費用は別途かかる場合が多いです。

遺伝子変異が見つかったら

BRCAの変異が見つかった場合、通常の乳がんの治療とは方針がかわってきます。これから手術をする際には、手術方法に変更がある場合があります。
また、乳がん・卵巣がん・前立腺がん・膵臓がんの患者さんを対象に、BRCA変異に対応した保険適用の薬剤を使うことができます。
具体的な治療方針については、医師と相談するようにしましょう。

遺伝子検査には事前のフォロー体制の確認が必須

あらかじめ遺伝子検査を受けておけば、陽性だった場合に、乳がん検診の回数を増やしたりなどで早期発見や早期治療が可能になります。遺伝子検査にあたっては、経済的負担が大きく、特に若くして陽性だった場合の心理的ショックが大きいです。さらに自身が遺伝していないかというだけでなく「子どもにも遺伝しないだろうか」など、さまざまな不安が伴います。

このような場合は専門家によるカウンセリングが重要な役割を果たします。ただし、カウンセリングの有無は医療機関によって異なり、またカウンセリングや相談窓口の周知が十分になされないこともあります。遺伝子検査を受ける際には、十分なフォロー体制が整っているかを確認しましょう。