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乳がんの治療後の再発リスクと定期検査の重要性

女性にとって時に命の脅威となる病気である乳がんは、なるべく早く治療することで手術以前と同じ生活に近づけることができます。ただ、早期発見・早期治療ができたとしても乳がんには「再発リスク」が伴うので、定期的なチェックが欠かせません。
今回は、乳がんの再発リスクおよび定期検査の必要性とその内容について紹介します。乳がんとの長い付き合い方の基本的な知識なので、ぜひ確認してみてください。

乳がんの治療後の再発リスク

乳がんに限らず、ほとんどのがんは治療後に再発リスクがあります。手術で取り除いたがん以外にも微小ながんが存在し、リンパや血液で運ばれてしまって全身のどこかで発症してしまう可能性があるからです。

再発するまでの潜伏期間はケースバイケースで、手術から数年後に発症することも珍しくありません。また、がんを再発する部位も様々ですが、手術箇所の近く(乳がんであれば乳房や周辺のリンパ)で発症することを「局所再発」、肺などの離れた部位で発症すると「遠隔転移」といいます。

乳がんの平均的な再発率はおよそ30%とされています。ただし、乳がんのタイプや手術時点での病期(ステージ)によって再発率や完治と見なされる期間が大きく異なるため、それぞれの違いについて理解しておくことをおすすめします。

乳がんのタイプと病期(ステージ)別の再発リスク

乳がんには性質ごとに「サブタイプ」という4分類が設けられており、それぞれで治療後の再発しやすい時期が異なります。

最も再発しやすい期間が短いのが「HER2陽性型」と「トリプルネガティブ型」とされており、治療から約2年間が再発する可能性が高いという傾向があります。一方、「ルミナルA型」、「ルミナルB型」は前述した2つのタイプと比べると増殖スピードが遅いため、治療から5年以降も再発する可能性があります。

また、治療した乳がんの病期(ステージ)によって再発率も異なり、Ⅰ期では約10%、Ⅱ期では15%、Ⅲ期では30~50%となっています。がんが進行していない初期の方が、再発率が低くなるといえるでしょう。

※出典:国立がん研究センター東病院「乳がんについて
   :Jatoi et al.JCO 2011「サブタイプ別の無発生生存率」

治療後の定期検査が大切

治療後の検査の頻度は、初期治療からの経過日数によって変化します。一般的には初期治療直後は1~2週間ごとの通院から始まり、その後、1カ月ごとや2カ月ごとと間隔が長くなります。ただし、手術の方法や予後などによって間隔が異なるので、自身の体調の変化を含めて担当医と相談しながら進める必要があるでしょう。

■乳がんの定期検査の期間の目安

初期治療後3年間:3~6カ月ごと
初期治療後4~5年間:6~12カ月ごと
初期治療後5年以降:年1回程度

一般的ながんは初期治療から5年間、再発が見られなければ完治と診断されることが多いです。ただ、前述のとおり乳がんのサブタイプによっては5年目以降も再発リスクがあるため、定期的な検査が求められています。

乳がんの治療後の検査とは

一般的に乳がんの治療後の検査は問診や視触診が中心となります。また、必要に応じて超音波検査、CT、MRI、PET、血液検査などの検査を行うこともあります。さらに年1回のマンモグラフィ検査も推奨されています。

マンモグラフィ検査は、X線(レントゲン)を用いた乳がん専用の画像診断の一種です。撮影台の上に乳房を乗せ、透明な板で挟んで薄く伸ばして撮影します。マンモグラフィ検査は個人差がありますが痛みを感じるケースがあるものの、潜伏中の微小ながんを発見しやすいため、治療後はもちろん、治療前の乳がんの検査でも採用されています。

ただし、再発の早期発見に対しては毎年の乳房検診が「生存期間の延長」につながるという結果は示されていないため、適切な間隔で画像診断を行う必要があるでしょう。

※出典:国立がん研究センター中央病院「乳房X線検査 (マンモグラフィ)

担当医との信頼と関係性の構築が大切

しばしば勘違いされがちですが、乳がんの「再発・移転」においては初期治療のように早期発見・早期治療と発症してから治療を開始した際の生存率に大きな差がありません。そのため頻繁に検査することだけがベストな方法ではないと理解することが大切です。

適切な間隔で視触診を受けつつ、体調の変化といった些細な不安や感情などを相談できるように担当医と信頼関係を築くことも大切です。そのうえで、手術していない方の乳房やその周辺のセルフチェックとマンモグラフィ検査を行いましょう。