logo

乳がん患者の精神的な負担と治療開始までの流れ

乳がんに限らず、日頃から「がんになった自分」を想定して生活している人は多くはないのではないでしょうか。そのため、がんと診断された際は少なからずショックを受ける人がほとんどです。不安や悩み、怒りなどの感情を抱くのは当然のことですが、そんなときは無理に抑え込むのではなく、誰かと共有して治療と向き合うことがとても大切です。そこで今回は乳がん患者の精神的な不安の対処法について解説します。

診断後のロードマップを確認しよう

「がんである」という診断を受けた後に抱く精神的な負担の大きな理由の1つが、今後の先行きが不透明であることです。そのため、まずは治療に臨むまでの大まかなロードマップを確認して、全体の流れを把握しましょう。

■診断後から治療開始までの流れ
1.がんの診断を受ける
2.家族や親しい人と話して事実を共有する
3.がんについて情報を集める
4.治療の準備
5.医師から病気や治療方針について説明を受け、疑問を解消する
6.必要があればセカンドオピニオンを受ける
7.療養手帳をつくる
8.治療開始

このような流れを理解して、自分が「現在」、そして「今後」すべきことをなんとなく把握するだけでも心が落ち着くきっかけの1つになります。全体の流れのうち、ポイントになる項目を詳しく紹介していきます。

家族の理解が本人の安心につながる

がんの治療において、家族や親しい人からの理解は非常に大きな役割を果たします。この段階では患者本人というよりも、家族が本人の気持ちを理解してあげることが重要です。本人の気持ちをすべて理解するのは困難ですが、真摯に向き合う姿勢は自然に伝わり、大きな支えとなります。ただ、がん患者の家族はしばしば「第二の患者」といわれるほど、精神的な負荷が大きく心のケアが必要になるケースも珍しくありません。家族自身の健康も大切にすることが、結果的に本人の支えにつながるということも理解しておくべきでしょう。

もし、相談できる相手がいなかったり、家族に理解してもらえることが困難だったりする場合は「がん相談支援センター」や「患者会」の利用も検討しましょう。また、医師、看護師のほか、心理士などの心のケアの専門家に頼ることも重要な手段の1つです。

信頼できる情報の集め方

正しい情報があれば客観的に物事を判断できる材料になります。一方、情報が不足すると漠然とした不安感の増大につながります。また、がんに関わる情報は氾濫しており、なかには悪意や誤ったものも少なくありません。そのため、正しい情報の入手先を把握することが、精神を安定させるための重要な要素といえるでしょう。

インターネットで調べる際、信頼性の高いウェブサイト以外の情報はいたずらに信じないようにしてください。たとえ検索ページの上位に掲載されていても、虚偽、誇張表現のほか広告目的の記事である可能性があるからです。また、乳がんを経験した人のブログも参考になる情報はたくさんあるものの「あくまで個人的な体験である」という認識を前提に収集することをおすすめします。信頼性の高いWebサイトとしては、国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」や専門学会による「診療ガイドライン」といった公的な機関のものを活用してください。

また、自分が入手した情報の正誤を確認することも欠かせません。治療に関することであればまずは担当医や看護師に確認したうえで、家族や親しい人と相談して検討しましょう。

セカンドオピニオンとは

担当医の治療方針や意見(ファーストオピニオン)に疑問や不安がある場合、他の医師に意見を聞くことを「セカンドオピニオン」といいます。がん治療はがんの種類ごとに、現時点でもっとも効果的だと科学的に立証されている「標準治療」が確立しています。ただし、患者への適用には医師によって意見が別れるケースもあるため、病気への理解の深化や本人が納得して治療を始めるためには重要な選択だといえるでしょう。

セカンドオピニオンを受ける際は、ファーストオピニオンの意見をしっかりと聞き、以下の点を明確にして臨むことで、より理解を深めやすくなります。

・病状
・進行度
・治療法を選択する理由

病状や進行度によっては、早期に治療を始めなければならないケースもあるので、準備段階から早めに確認する必要があります。最近ではセカンドオピニオン外来を設ける病院も増えているので、受診先が見つからない場合は探してみることをおすすめします。

一人で悩みを抱え込まないようにしましょう

乳がんに関する精神的な負担と、治療開始までの緩和につながるポイントについて解説しました。現在、乳がんの患者を支えるための支援機関や職種はたくさん設けられているので、必要に応じて積極的に活用することをおすすめします。また、家族や親しい人ともコミュニケーションを取ることで、自分の気持ちを理解してもらえるよう働きかけることも重要です。いずれにしても一人で抱え込まないよう、自身の心身を大切にすることを心がけましょう。