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乳がん検診におけるマンモグラフィ検査のメリット・デメリット|被曝のリスクは高いの?

乳がんは女性の生命や生活に大きな影響を及ぼすリスクの大きい病気の1つです。乳がんは早期発見・早期治療によって悪影響を最小限に留められるため、定期的な乳がん検診が非常に重要とされています。乳がんの検診方法は様々ですがその中でも代表的なのが「マンモグラフィ検査」であり、乳がん検診を受けたことがなくても名称を知っている人は多いのではないでしょうか。そこで今回はマンモグラフィ検査の内容と優れているポイント、さらに不安を抱かれることが多い「被ばくリスク」について解説します。

マンモグラフィ検査とは

乳房専用のX線撮影装置(画像診断装置)が「マンモグラフィ」であり、マンモグラフィを用いた検診をマンモグラフィ検査といいます。日本では2004年から40歳以上の人に対して、2年ごとにマンモグラフィ検査と視触診検査を併せた乳がん検診が行われています。

マンモグラフィ検査は、まず乳房を板で挟んで圧迫することによって、正常な乳腺が重ならないような状態にした後、X線を用いて撮影を行います。もし乳房内に腫瘤(しこり)があれば白い塊のような影。石灰化していれば白い点状もしくは線状の影として映し出されます。また、マンモグラフィ検査の結果はカテゴリー1~5に分類されます。

■マンモグラフィ検査のカテゴリー分類

指標 がんの確率
カテゴリー1 異常なし
カテゴリー2 良性病変のみ
カテゴリー3 がんを否定できず 5~10%
カテゴリー4 がんの疑い 30~50%
カテゴリー5 がん ほぼ100%

マンモグラフィ検査は複数の角度で撮影されるのが一般的で、その度に乳房を挟む向きも異なります。例えば、乳房・乳腺を最も広く描出できる「MLO(内外斜位方向)」の場合は、少し傾斜を付けた縦方向に挟んだ後に内側の斜め上から圧迫を加えます。一方、MLOでは抽出が困難な部分を検査するための「CC(頭尾方向)」では乳房を上下で挟み、上側から圧力をかけて撮影します。通常、マンモグラフィ検査は着替えから撮影まで10〜15分程度。画像を3Dで描画する3Dマンモグラフィは20分程度で検査できます。

マンモグラフィ検査のメリット

マンモグラフィ検査では視触診では分からないしこりや石灰化のある小さな乳がんを発見しやすいのが大きなメリットです。実際、マンモグラフィ検査の感度は80%程度とされており、視触診を併合することで、50歳以上は「乳がんの死亡率減少効果があるとする十分な根拠がある」とされています。また、40歳代も「死亡率減少効果があるとする相応の根拠がある」と広く認められています。乳がんの罹患者は30代後半から40代にかけて急増するため、マンモグラフィ検査は罹患者個人としても国全体の施策としても重要な乳がん検診の方法といえるでしょう。

※関連記事:知っていますか?乳がんは女性がかかる「がん」第1位。

マンモグラフィ検査の注意点・デメリット

マンモグラフィ検査は40歳以上の女性に対しては有用性が認められているものの、40歳未満の人については死亡率を減少させる科学的な根拠は示されていません。そのため過剰検診やX線の被ばくリスクを考慮した結果、40歳未満の乳がん検診にはマンモグラフィ検査が組み込まれていないというわけです。

また、マンモグラフィ検査は乳房を挟んで圧迫するため、痛みを感じる可能性があるのも注意点の1つです。ただ、基本的には我慢できない痛みではなく、痛みを感じるのも数秒間程度であるため不安になる必要はありません。痛みや圧迫感の感じ方は人それぞれですが、基本的に乳腺が多い人ほど痛みを感じやすい傾向があるとされています。

マンモグラフィ検査と被ばく。検査できない人の条件とは

さらにマンモグラフィ検査を行ううえで避けられないのが、レントゲン撮影による放射線の被ばくです。ただ、こちらも過度に心配する必要はありません。基本的にマンモグラフィ検査で乳房が浴びる放射線の「吸収線量」は1~3mGyであり「実効線量」は0.05~0.15mSvです。私たちが日常的に浴びている自然放射線量は「年間約2.40mSv」とされていることから、マンモグラフィ検査による被ばくは「ごく微量」といえるわけです。ただし、放射線やマンモグラフィ検査の特徴から、身体の状況によってはマンモグラフィ検査を受けるのが困難な人もいます。最後にその一例を確認してみましょう。

■マンモグラフィ検査が受けられない可能性がある人

・妊娠中や妊娠している可能性がある人
・豊胸手術を受けた人
・ペースメーカー(心臓)を挿入している人
・心臓や肺などの胸部手術を受けたことがある人

マンモグラフィ検査を組み合わせた乳がん検診を受診しましょう

年齢や方法、受けられる条件など注意点はあるものの、マンモグラフィ検査を適切に受診することで、高い確率で乳がんの早期発見・早期治療につなげられます。多くの人にとって痛みや放射線についても過度に不安になる必要はありません。また、若い女性に多く、乳がん病変が隠れやすい特徴を持つ「高濃度乳房」においても超音波検査と併用することで診断できる可能性が高まると期待されています。定期健康診断を受診する際は、マンモグラフィ検査を組み合わせた検診をぜひ検討してみてください。