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乳房再建の基礎知識。一次再建・二次再建や再建材料の種類と違い

乳がんの手術によって喪失、もしくは切除することで変形した乳房を新しく作り直すことを「乳房再建」といいます。乳房再建手術を施術することで、乳房を取り戻すことによる自信の創出・前向きさの向上はもちろん「左右の胸の大きさの違いによる肩こり」といった手術後のリスクの低減にもつながります。また、それ以上に乳がんの手術を受けたとしても「乳房を取り戻せる」という希望を多くの女性に与える大切な役割を担っています。

乳房再建手術は施術するタイミングや用いる再建材料によっていくつか分類でき、患者さんの状態などによって適した方法は異なります。今回は乳房再建の種類について確認してみましょう。

乳房再建の種類(タイミング):一次再建と二次再建

乳房再建は手術を行うタイミングによって「一次再建」と「二次再建」に大別できます。乳がんを治療するための手術と同時に再建するのが一次再建で、一定期間後に行うのを二次再建といいます。

■一次再建の特徴

乳がんの切除と同じタイミングで行う再建手術が「一次再建」で、同時再建や即時再建と呼ばれることもあります。一次再建はさらに「一次一期再建」と「一次二期再建」に分類されます。乳がん切除と乳房再建を初回の手術で完了できるのが一次一期再建であり、一次二期再建は初回の手術で組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)を挿入して皮膚を伸ばしてから、次の手術で人工乳房に入れ替える乳房再建手術となります。通常、一次二期再建は組織拡張器を挿入した後は1週間~2週間程度の入院が必要です。

一次一期再建・一次二期再建のいずれも、後述する二次再建と比べると治療期間が短く手術の回数が少ないのがメリットといえるでしょう。治療費はもちろん、乳がん治療によって切除された乳房を目の当たりにする機会も少ないため、喪失感や精神的な負担の軽減にもつながります。

一方、二次再建と比べると手術の時間・入院期間が長期化しやすい傾向があります。さらに乳がんの手術から再建手術の施術まで時間的な猶予が少ないため、乳房の形状など慎重に考える時間も多くないのも注意すべきでしょう。

■二次再建の特徴

二次再建は乳がんの手術後に一定期間を設けた後、施術する方法です。一般的な間隔は半年程度とされていますが、ケースによって異なります。二次再建は複数回の手術が前提ですが一次再建と同じように一期と二期があり、自家組織で乳房を再建する際は「一期(手術回数2回)」。改めて組織拡張器を挿入し、その後に乳房を再建するケースを「二期(手術回数3回)」となります。

乳がんを切除する手術と再建手術を区別して行えるため、再建後の乳房の形容のほか、再建手術を行う形成外科などの医療機関も選びやすいのが特徴といえるでしょう。一方、乳房を失った状態で日常生活を送る必要があるほか、手術回数が一次再建よりも多いため経済的な負担が増大しやすい傾向があります。

※国立がん研究センター:乳房再建術について

乳房再建の種類(再建素材):自家組織と人工物

乳房再建を行うためには、失った乳房の組織の代替となる「再建素材」が必要です。再建素材の種類は「自家組織」と「人工物(インプラント)」の2つに大別されます。その詳細を以下で確認してみましょう。

■自家組織による乳房再建

自家組織とは「自分の体の組織」という意味です。乳房の再建素材としては「腹部」と「背中」のいずれかを採用するケースが一般的です。さらに腹部から切り取る組織によってさらに細分化されます。「腹直筋皮弁法」は腹部の皮膚、脂肪、筋肉の一部と血管を胸に移植し、「穿通枝皮弁法」は腹部の脂肪だけを血管と一緒に取りだして胸に移植します。

自家組織のメリットは、再建後の乳房の形、柔らかさ、温かさなどが自然になりやすいことが挙げられます。一方、手術時間、入院期間が長くなりやすいうえ、腹部に傷が残り、腹直筋皮弁法は筋肉を切り取るため腹筋が弱くなるうえ、過去に腹部の手術を受けた人には適していません。穿通枝皮弁法は過去の手術の有無は関係ありませんが、手術時間はさらに長くなるうえ、腹直筋皮弁法と比べると施術できる医療機関が少ないのが注意点です。

■人工物(インプラント)による乳房再建

シリコンブレストインプラントという人工物を乳房内に留置して、乳房を再建する方法です。手術の時間が短く、乳房以外の部位に傷が付かないのが大きなメリットといえるでしょう。一方、留置したインプラントが破損する恐れがあるほか、人工物は「異物」であるため感染リスクも拭いきれません。さらに定期的なメンテナンスが不可欠なので、形成外科に通院し続けなければならないことも理解して手術に臨む必要があるでしょう。

各医療機関との話し合いが大切

乳房再建の方法は複数ありますが、いずれも長所と短所があるうえ、患者さんの状態や乳がんの手術の手法などによって選択できる方法が限定されるケースも珍しくありません。乳がん手術と乳房再建の手術が異なる医療機関で行われることもあるため、医療機関同士の連携なども含めて、しっかりと話し合ったうえでの選択をおすすめします。