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他人事ではないから「がん教育」が大切なワケ。定義と具体的な内容とは

2000年にパリで開催されたワールドキャンサー・サミットでは2月4日を「ワールドキャンサーデー(世界対がんデー)」とすると宣言されました。以降、毎年2月4日にはがんについて認識・理解を深め、がんを患っている人たちに個人が何をできるのか考える意識付けるためのキャンペーンが世界中で行われています。

がんに対する問題意識を世界、国、社会に浸透させるためには、個人の取り組みだけでなくより大きな枠組みでの施策も必要不可欠です。そこで今回は、文部科学省が中心となって取り組んでいる「がん教育」をめぐる情報を紹介します。ご自身はもちろん、子どもや孫などがどの程度、がんに対する正しい理解をしているのか意識しながら確認してみましょう。

なぜ学校での「がん教育」が大切なのか

文部科学省はがん教育を「健康に関する国民の基礎的教養」として身に着けておくべきものになりつつあると明示しています。その大きな理由として挙げられているのが「生涯のうち国民の二人に一人がかかると推測されている」ということです。もう少し具体的にがんの生涯罹患率を確認してみましょう。

男性 女性
一生でがんと診断される確率 65.5%(2人に1人) 51.2%(2人に1人)
がんで死亡する人の確率 25.1%(4人に1人) 17.5%(6人に1人)

※出典:がん情報サービス「最新がん統計」

上記のデータからは文部科学省の指摘通り、一生のうちにがんと診断される確率は男女ともに2人に1人以上となっています。さらに死亡する確率も男性は4人に1人、女性は6人に1人であり、厚生労働省の「令和4年 人口動態統計月報年計の概況」によるとがん(悪性新生物)の死因は第1位となっています。

■日本の死因トップ5

・1位:悪性新生物(24.6%)
・2位:心疾患(14.8%)
・3位:老衰(11.4%)
・4位:脳血管疾患(6.8%)
・5位:肺炎(4.7%)
※出典「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況:第10表

これらのデータからがんは「私たちに身近で死因にもつながる重大な病気」であると考えられるでしょう。文部科学省の「健康に関する国民の基礎的教養として見つけておくべきものになりつつある」という見解にも納得できる人は多いのではないでしょうか。

がん教育の取り組みの課題と成果

2022年10月に行われた「第83回がん対策推進協議会」では、文部科学省のがん教育の取り組みについて議論が交わされました。同会議で公開された「文部省におけるがん教育の取組について」では、学習指導要領等に基づいて、小学校、中学校、高校の児童生徒の発達段階に応じた「がん教育」の取り組みについて紹介されています。主に教科用図書におけるがんの取り扱いが主であり、教材や補助教材、ガイドラインの作成・配布のほか、シンポジウムや外部講師研修会、講演会の実施など学校や教員に向けてのサポートも行っています。外部講師の活用状況についてもデータが開示されているので、確認してみましょう。

令和3年度におけるがん教育の実施状況調査の結果より
※出典:文部科学省「文部省におけるがん教育の取組について

これらの事業の結果、2016年から2021年にかけて、児童生徒が「そう思う」と回答した割合は以下のように変化したというデータも公開されています。

■がんの学習は、健康な生活を送るために重要だ(事業実施後)

・2016年:86.9%
・2021年:90.4%

■がん検診を受けられる年齢になったら、検診を受けようと思う(事業実施後)

・2016年:69.5%
・2021年:74.8%

■がんになっている人も過ごしやすい世の中にしたい(事業実施後)

・2016年:73.8%
・2021年:81.3%

一定の成果が挙げられている一方、「がんに特化した教育が実施されておらず、生活習慣病との関連で付録として扱われているにすぎない」、「単発的な教育で各学校の方針に任せている」、「教師のがんに対する知識が乏しい」といった課題も顕在化しています。そのような意見を受けつつ、文部科学省はがん教育の充実に向けて、引き続き、研修や外部講師の活用などの取り組みを推進していくとしています。

がん教育から考える一人ひとりががんについて知っておくべきこと

がん教育の必要性と現状、課題について解説しました。最後に一人ひとりが理解しておくべきことは「がんについて何を知っておくべきなのか」ということではないでしょうか。がん対策推進協議会では出席した委員が、がん教育の内容について必要な項目をそれぞれ挙げています。これらの項目はがん教育のみならず、大人であっても最低限知っておくべきことにもつながるのではないでしょうか。最後にそれぞれ項目を紹介します。

■がん全般に関して必要な教育項目(一部抜粋)

・日本人の2人に1人が罹患している現状と、他の生活習慣病と同じ身近な病気であること
・各がん種の発症年齢
・がんの発生と原因
・ほとんどはうつる病気ではないこと
・1次、2次予防が非常に有効であること
・手術、放射線治療、化学療法など治癒の選択が可能であること
・セカンドオピニオンの重要性
・治療後のケアが充実してきており、怖くて苦痛の多い病気ではないこと
・がんになっても、社会人として役割を果たし希望を持って生きている患者、経験者が増えていること

※出典:厚生労働省「がん教育に関する委員からの意見まとめ

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