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子宮頸がんの予防と早期発見の重要性。ワクチン接種や検診が大切な理由とは?

子宮頸がんは早期に発見できれば治癒率が高いとされています。また、子宮の入り口に発生するので、検査で発見されやすいという特徴があります。一方で、進行すると治療が難しくなり、子宮の摘出や死亡につながりかねません。事実、毎年約3,000人の女性が亡くなっています。

そこで本記事では子宮頸がんの予防方法や早期発見の重要性に触れた後、検診やワクチン接種の有効性を解説します。

子宮頸がんを予防する方法は

子宮頸がんに限らず、がんの予防には健康的な生活が重要です。日本人を対象とした研究では、バランスの取れた食事や禁煙、過度な飲酒を控える、運動、体形の維持、感染予防が効果的だといわれています。そのうえで、子宮頸がんに特化した予防方法は2つあります。

1. HPVワクチンの接種
子宮頸がんの原因の多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)への長期的な感染だと明らかになっているので、ワクチン接種が有効です。

2. 定期的な検診
問診・視診・細胞診・内診を行い、がんになる過程の異常などを発見します。国立がん研究センターは、20歳以上の女性に対して2年に1回の検診を推奨しています。

子宮頸がんに早期発見が重要な理由

子宮頸がんの早期発見が重要な理由は、死亡リスクを大きく減らせるからです。実際に子宮頸がんは臨床病期(進展度、ステージ)によって、5年生存率が大きく変わります。

■5年生存率 :がん患者のうち、診断から5年後の生存が確認できた割合

全国がんセンター協議会加盟施設での診断治療症例(2011年~2013年)によると、ステージ1の生存率は93.6%ですが、ステージが上がるごとに低下します。ステージ2は82.2%、ステージ3は67.9%、ステージ4では26.5%まで減少します。

以上の結果から進行する前に発見することが大切ですが、問題は異形成(がんになる前の状態)の時期に自覚症状がないことです。定期的な検診で早期発見に努めましょう。

※出典:厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A
※出典:全国がんセンター協議会「全がん協加盟施設の生存率協同調査

子宮頸がんの検診とは

子宮頸がんの検診には、問診、視診、細胞診、内診があります。このうち細胞診は、科学的に子宮頸がんの死亡率を下げることが確認されており、国立研究開発法人国立がん研究センターが推奨しています。

これらの検診を終えた後、10日から1ヶ月ほどで検診結果を受け取る流れです。なお、通知方法は主に文書です。もしも異常が見つかった場合は子宮頸がんの可能性があるので、必ず精密検査を受けましょう。

以下では各検診方法を解説します。

問診

問診票への記入と医師からの質問があるので、事前に準備しておきましょう。以下は質問例です。

・月経について(月経周期や不正性器出血の有無、直近の月経の様子など)
・生理痛の有無
・妊娠や分娩の経験
・閉経年齢
・既往歴、手術歴、家族歴
・検診受診状況
・ホルモン剤(ピルなど)使用の有無
・HPVワクチン接種の有無

視診・細胞診・内診

視診では、内診台に上がった状態で子宮頸部の様子を観察します。具体的にはクスコ(腟鏡)を挿入し、炎症の有無などを確認する作業です。このとき受診者と医師・看護師との間にはカーテンが下ろされています。

細胞診ではブラシやヘラ、綿棒などで子宮頸部の上皮を擦り、細胞を採取します。その後、細胞を染色し顕微鏡で観察することで、異常の有無を調べます。器具の挿入に違和感を覚えたり軽い出血を起こしたりする方もいますが、短時間で済みますし、ほとんど痛みはありません。

内診では左手の指を膣内に入れ、右手でお腹を押します。そうすることで子宮の形や大きさ、表面の状態などを確認します。

※出典:東京都福祉保健局「子宮頸がん検診ってどんな検査?
※出典:公益財団法人 日本対がん協会「子宮がん検診について

子宮頸がんはワクチンで予防できる唯一のがん

子宮頸がんはワクチンで予防できる唯一のがんといわれています。ワクチンを受けることによって、子宮頸がんの主な原因であるHPVというウイルスに対抗できるからです。

■HPV(ヒトパピローマウイルス)

子宮頸がんの主な原因となるウイルス。皮膚や粘膜に感染するという特徴があり、性交渉によって感染する。海外では性交渉の経験がある女性の半数以上が一生に一度は感染するといわれるが、多くの場合(約90%)は体内から自動的に排除される。排除されずに何年にもわたって持続的に感染した場合、子宮頸がんになるリスクがある。

多くの方々は免疫機能で体内からHPVが排除されるものの、性的接触によって一生に何度でも感染する可能性があります。子宮頸がん予防に関心がある方は、HPVワクチンの接種を検討してみてください。

以下ではワクチンを接種するメリットを解説します。

子宮頸がんワクチンを接種するメリット

HPVワクチンの接種により、HPVのなかでも特に子宮頸がんを起こしやすいタイプ(16型と18型)の感染を予防できます。子宮頸がんの原因の50~70%が16型・18型なので、そのリスクを排除できるのです。

また国内外の疫学調査では、HPVワクチン接種によって、子宮頸がんの前がん病変(がんになる前の状態)を予防できることが明らかになっています。また、ワクチンの効果には持続性があり、抗体は12年維持される可能性が示唆されています。

※出典:厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A
※出典:厚生労働省「小学校6年~高校1年相当 女の子と保護者の方へ大切なお知らせ(詳細版)

検診とワクチンで子宮頸がんを予防しよう

今回は子宮頸がんの予防方法を中心に解説しました。HPVワクチン接種や定期的な検診の重要性についてご理解いただけたでしょうか。

診断治療症例の部分で説明したように、子宮頸がんは「予防」と「早期発見」が生存率に直結する疾患です。少しでも健康に不安があったり、予防に関心があったりする方は、ぜひ検診機関や医療機関を受診してみてください。

ワクチン接種と2年に1回の検診によって、あなたや周囲の方々の命を守ることにつながります。お住まいの自治体のがん検診担当部署に問い合わせてみましょう。