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子宮頸がん(マザーキラー)のワクチンは受けるべき?副作用や後遺症、費用や推奨年齢などの実情とは

子宮頸がん(マザーキラー)は、日本で毎年約3,000人が死亡している病気です。近年、多くの先進国では減少傾向にあるなか、日本ではその数が増加していることがしばしば課題として挙げられています。その大きな要因の一つが、子宮頸がんの予防ワクチンである「HPVワクチン」の接種率の低さです。そこで今回は、HPVワクチンの接種を巡る日本の動向とマイナスなイメージについて、正しい情報をまとめました。

子宮頸がんのHPVワクチンの接種率が低い理由

子宮頸がんは子宮の入り口部分である子宮頸部に発生するがんです。国立がん研究センターによると1970年代から死亡者数が増加し続けており、2018年の患者数は10,978人。2019年時点の死亡者数は2,921人となっています。子宮頸がんのHPVワクチンの接種率は2018年時点で0.8%とされており、他の先進国と比べると非常に低いことが明らかになっています。

■HPVワクチンの接種した女性の割合(2017年)

カナダ 83%
イギリス 82%
オーストラリア 80%
イタリア 67%
アメリカ 55%
ドイツ 31%
フランス 24%

子宮頸がんのきっかけとなるHPVは、50%以上の女性が生涯で一度は感染すると推定されており、2種類のHPVワクチンを6ヵ月間に3回接種すれば子宮頸がんの原因の50~70%を防げるとされています。また、接種率が80%を超えるオーストラリアでは、集団免疫効果によって2060年には症例数が10万人に4人以下になるというシナリオが公表されています。

このように世界的にHPVワクチンの接種が推奨されるなか、日本だけが取り残されてしまっているのでしょうか。その理由はHPVワクチンの副作用に対するイメージが大きく関わっています。

※出典:厚生労働省「小学校6年~高校1年相当の女の子と保護者の方へ大切なお知らせ

HPVワクチンの接種率が70%から0.8%に低減した「副作用」

日本ではHPVワクチンは2013年4月に小学6年生から高校1年生までの女性を対象に定期接種が始まり、サーバリックス・ガーダシルという2種類のワクチンを無料で受けられるようになりました。しかし、接種後の副作用が多くのメディアに取り上げられ、同年6月からは積極的な接種の呼びかけが中止されたのです。その結果、定期接種になる前までは70%以上あった接種率が0.8%まで低下してしまったのです。HPVワクチンを接種することで発生する可能性のある副作用とその頻度を確認してみましょう。

■HPVワクチンの接種後の主な副作用

サーバリックス ガーダシル 頻度
かゆみ、注射部の痛みや腫れ、腹痛、頭痛、疲労など 注射部の痛みや腫れなど 10%以上
じんましん、めまい、発熱 注射部位のかゆみ・出血・不快感、頭痛、発熱など 1~10%未満
注射部位の知覚異常、しびれ感、全身の脱力 手足の痛み、腹痛など 1%未満
手足の痛み、失神など 疲労感、失神、筋肉痛・関節痛など 頻度不明

■特に重い症状

主な症状 頻度
アナフィラキシー 呼吸困難やじんましんなどを症状とする
重いアレルギー
約96万接種に1回
ギラン・バレー症候群 両手足の力が入りにくくなるといった
末梢神経の病気
約430万接種に1回
急性散在性脳脊髄炎 頭痛、嘔吐(おうと)、意識の低下といった
脳などの神経の病気
複合性局所疼痛症候群 外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる
原因不明の病気
約860万接種に1回

※出典:厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A

上記の副作用と特に重い症状の頻度は、他のワクチンと比較しても特段に危険性が高いというわけではありません。実際、厚生労働省は積極的な接種の呼びかけは中止していたものの、2014年1月には専門家部会は「ワクチンの成分によって神経や免疫などに異常が起きているとは考えにくく、接種の際の不安や痛みなどがきっかけで症状が引き起こされた可能性がある」との見解を発表しています。それに加え、大々的にHPVワクチンによる副作用が報道されたことによって強いマイナスイメージが根付いてしまったことが、子宮頸がんが増加している大きな原因といえるでしょう。

2022年4月からHPVワクチンの定期接種の積極的勧奨再開へ

2021年11月26日、厚生労働省は8年ぶりにHPVワクチンの定期接種の積極的な勧奨を2022年4月から再開するように全国の自治体に通知しました。これによって市町村は接種対象者やその保護者に対して、広報誌、ポスター、インターネットを使ってワクチンなどについて広報を行うこととなります。この背景としては、積極的な勧奨を差し控えられていた約8年間で「接種による有効性が副作用のリスクを明らかに上回ると認められたため」と厚生労働省は明示しています。WHO(世界保健機関)が子宮頸がんを「撲滅できるがん」と位置付けて、2030年までに女性の90%以上がワクチン接種を終えるという目標を掲げていることも大きな要因といえるでしょう。

情報を精査して積極的な接種を心がけましょう

子宮頸がんワクチンの接種率が異常に低い理由と副作用について解説しました。2022年4月からは国内の子宮頸がんを巡る動向は活発になると予想されています。対象者が思春期の女性ということもあり、子どもだけでなく保護者が報道やSNSをしっかりと精査し、センセーショナルな情報に振り回されずに対応することが求められます。子宮頸がんは精神的、身体的に女性に大きな苦痛を与える可能性がある一方、ワクチンの接種と年1回程度の定期検査で大幅に発生率、再発率、死亡率を下げることが可能であることも覚えておきましょう。