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マザーキラー(子宮頸がん)とは。原因となるHPVとワクチン接種のすすめ

毎年、約3,000人の女性が死亡している「子宮頸がん」は、若い世代の死亡率が高く、子どもを残して亡くなるケースが多いことから「マザーキラー」とも呼ばれています。

多くの先進国では子宮頸がんで亡くなる人が減りつつあるなか、日本の死亡者数は増え続けています。その理由や罹患リスクを大幅に下げられるワクチンのほか、すべての女性が知っておくべき、マザーキラーの情報についてまとめました。

マザーキラー(子宮頸がん)とは

マザーキラー(子宮頸がん)は、子宮の入口部分である「子宮頚部」に発生するがんです。国立がん研究センターによると、日本全国で1年間に約11,000人が診断されており、そのうち約3,000人の女性が死亡。その数は1970年以降、増加し続けています。
また、子宮頸がんと診断される女性は20代後半から急増し40~44歳でピークを迎えます。その傾向は1980年代は人口10万人に約20人に対して、2010年代は30人超になっており、明らかに強まっています。子宮頸がんは特に若年層は注意が必要ながんといえるでしょう。

※出典:国立がん研究センター「子宮頸がん(しきゅうけいがん)」

マザーキラー(子宮頸がん)の症状

マザーキラーは、がんになる前に「子宮頸部異形成」という状態を数年経て発生します。この状態では出血や痛みなどの自覚症状はほとんどありません。進行するにつれて月経期間外の出血やおりものの増加、下腹部の痛み、血尿といった症状が現れます。治療方法は手術療法、放射線療法、化学療法のいずれか、もしくは複数を組み合わせて行います。ステージが進行するほど、術後の予後、妊娠の可否などのリスクが高まります。その一方、ステージⅠの実測生存率は92%を超えており、早期治療できれば比較的予後は良いがんといえるでしょう。

ただし、前述のとおり子宮頸がんの初期は自覚症状がほとんどないので、早期発見するには定期的な検査が非常に重要となります。

マザーキラー(子宮頸がん)の原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)

マザーキラーはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染がきっかけで、発生することが明らかになっています。HPVは性感染症のウイルスであり、男女ともに感染する可能性があります。特殊なウイルスではなく、性交渉の経験がある女性の50~80%は感染することが明らかになっています。

また、HPVに感染したからといって必ずしも子宮頸がんが発生するわけではありません。約90%のHPV感染者は免疫によってウイルスが自然消滅します。女性の一部においてウイルスが長期的に残り続け、細胞が異常な形に変化して「異形成」をつくり、数年から数十年かけて子宮頸がんに進行します。HPVには複数の種類があり、特にHPV16型、HPV18型は異形成や子宮頸がんへの進行スピードが早いとされています。

HPVワクチンとは

子宮頸がんの発生要因であるHPVの感染を予防するためのワクチンはすでに開発されており、日本ではHPV16型、HPV18型に対する「2価」とそれらに加えてHPV6型、HPV11型にも有効とされる「4価」の2種類が承認されています。いずれのワクチンもすでに感染してしまっている細胞には効果はありません。感染予防のためには、初めて性交渉する前の10代前半に接種するのが最も有効と考えられています。
ただし、性交渉の経験がある成人女性も接種する意味は大いにあります。

事実、いち早くHPVワクチン接種を国の施策として行ったオーストラリア、イギリス、アメリカなどではワクチンの効果によってHPV感染などが減少していることが明らかになっています。例えば、オーストラリアでは集団免疫効果によってワクチンの非接種者のHPV感染率も低減しており、2060年には症例数が人口10万人あたり4人以下になるシミュレーションが公表されました。現在、ワクチン接種によって子宮頸がんの60~70%は予防できると考えられています。

HPVワクチンのリスクと日本の接種状況

日本ではHPVワクチンの接種が2013年4月から「定期接種」になっています。した。公費負担となり多くの女子学生が接種を開始しました。しかし、ただし、その直後にHPVワクチンによって副次的な「多様な症状」が発生するという報告がなされ、同年6月からは自治体による積極的な勧奨はほとんど行われていません。

この「多様な症状」として、月経不順や頭痛、過呼吸などが報告されています。これによって国内の接種率が現在も低いままとなっていますが、2017年の厚生労働省専門部会において多様な症状とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠はないとの見解が発表されています。
さら世界保健機関(WHO)もHPVワクチンの推奨を控えるべき安全性の問題は見つからないとの声明を発表しています。

そしてさらに問題が後回しになったことで、子宮頸がんは依然増え続けています。

マザーキラー(子宮頸がん)を予防には 定期検診とワクチン接種が大切

精神的、身体的に女性に大きな苦痛を与えることもあるマザーキラーは、年1回程度の定期検査で早期発見による治療で再発率、死亡率を下げることができます。またHPVワクチンの正しい情報を発信し、接種率の向上を目指す医療機関もたくさんあるのでワクチン・検診などに興味がある方はぜひ婦人科などに相談することをおすすめします。
子宮頸がんはHPVウィルス感染が原因と説明しました。従って子宮頸がん予防ワクチンは、成人の女性でもあるいは男児でも接種が望まれるものなのかもしれません。現にオーストラリア、アメリカ、カナダ、スイス、フランスでは男子の接種が始まっています。私たちも今一度、冷静に作用と副作用をしっかりと考えて選択をするべきでしょう。