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無理せずに始めよう。乳がんの術後の職場復帰の目安と日常生活で注意すること

乳がんの手術後の療養生活は、数年かかることもある長い道のりとなります。全てが今までどおりの生活に戻るわけではないものの、しっかりと治療に向き合えば心と体を健康に保て、社会復帰も可能です。
今回は乳がん術後の生活について、一般的な流れとなるべく従来の生活を取り戻しながら、再発リスクの低減につながるポイントについて解説します。

職場復帰は早くても手術から数週間後

乳がんの手術後の職場復帰の時期は、手術内容によって大まかに異なります。例えば、がん細胞とその周辺の組織を切除する「乳房部分切除術」の場合、一般的には入院から4日後に退院できるので早ければ手術の翌週には職場復帰できるでしょう。
一方、乳房をすべて切除する「乳房切除術」は部分切除術よりも入院期間が長く、最長で10日間も入院しなければなりません。体への負担も大きく、リンパ節郭清を行った場合はリンパ浮腫の予防を含めたリハビリ期間も必要なので、職場復帰は数週間以降になることが多いです。

また、乳がんは術後5年以降に再発するケースも珍しくありません。そのため、社会復帰後も化学療法やホルモン療法を行う必要があります。化学療法は数カ月、ホルモン療法は数年にもわたって行う必要があります。そのため、職場復帰する際は期間に関わらずにしっかりと担当医などと計画的に行わなければなりません。

職場復帰を考える際は、職場の理解と配慮を得ることも大切です。必要に応じて、同僚や上司の乳がんそのものに対する意識も確認する必要があるでしょう。定期的な通院の可否や無理のない業務内容、勤務形態の変更といった調整は、職場復帰する本人と職場の双方が気持ちよく働き続けるためには重要です。

※関連記事:「手術療法」、「薬物療法」、「放射線療法」。乳がんの代表的な治療法

無理せずに今までの生活を取り戻そう

ホルモン治療の場合、数年にわたって薬を服用する必要があるなど、乳がんの治療は非常に長いこともあります。化学療法中は副作用で吐き気を覚えることもあるでしょう。しかし、手術以前の生活が一変するわけではありません。医師からの指示に従ったうえで、仕事や旅行、性生活を送ることも可能です。

注意すべきは精神的にも身体的にも「無理をしないこと」です。例えば、手術直後のリハビリで激しく体を動かすほか、リンパ節郭清後に重いものを長時間持ってしまうと「リンパ浮腫」が発症するリスクが高まってしまいます。また、職場などでは乳がんに対する理解がなかなか得られずに精神的に辛い思いをしてしまうケースも少なくありません。

そのようなときは決して無理をせず、担当医や看護師、ソーシャルワーカーが在籍する医療機関に相談しましょう。経済的な問題の場合は行政などで相談や支援を受けられます。

同時に術後の家族との向き合い方も大切です。なかには「迷惑をかけたくない」という思いから、自身の気持ちなど伝えない患者さんもいますが、逆に家族にとっては状態が分からないことが負担になり、結果的に全員が疲弊してしまうケースも珍しくありません。
家族全員としっかりとコミュニケーションをとり、各々に適した言葉で患者さんの気持ちや乳がんについて理解を深める必要があるでしょう。

再発リスク低減のためにできること

乳がんの術後の治療の大きな目的が「再発の防止」です。ホルモン療法を続ければリスクを下げられるものの、ゼロにすることは困難です。そのため、すべて生活を戻すのではなく、これまでの生活習慣を見直す必要もあるでしょう。

その代表例が食事です。そのなかで最も気を付けなければならないのは「肥満にならないこと」です。閉経後は肥満による乳がんの発症・再発リスクが明らかになっているので、脂肪分の摂り過ぎなどには気を付けなければなりません。
また、適度に運動している人は運動不足の人よりも乳がんの発症・再発リスクが低いという研究もあるため、栄養バランスが整った食事と適度な運動を心がけることで再発リスクの低減につなげられます。

喫煙や飲酒においては乳がんとの関連性は明らかになっていません。ただ、生活習慣病や肺がんといった数多くの病気のリスクが高まるため、喫煙は手術を契機に止めるべきですし、お酒もほどほどに見直す必要があるでしょう。

乳がんの早期発見・早期治療が大切

乳がんの手術後について解説しました。乳がん手術後の社会復帰までの期間は、がんの大きさやステージによって大きく左右されます。当然、早期発見・早期治療ができれば手術も軽微になるので社会復帰を早められ、体の負担も小さくなります。定期的な検査やセルフチェックを行うことが、もし乳がんになったとしても生活への影響を最小限にできる重要なポイントといえるでしょう。

※関連記事:乳がん手術後のリハビリの開始時期と目的と内容、継続の重要性について